今日もご無事で。

今日も無事なら明日も無事でいて。そんなくだらない話。

人生は続くだろう カレンダーのように

 今日、大好きなバンドのライブを見た。梅雨明けを知らされない東京では、暑い日差しが降り注いでちっとも涼しさを運んでこない生ぬるい風が吹いていた。肌にまとわりつくような空気が、いよいよ夏の到来を知らせた。フロントマンがギターを掻き鳴らすのを遠目に見ながら、心を動かされたり、この空間を俯瞰的に見たりしていた。あれ、この時間、いつまで続くんだろう。それは「ライブがいつまで続くのか」ということではなく、「人生がいつまで続くのか」ということだった。
 まさか自分のことを自分でこんな風に喩える日が来るとは思わなかったのだけど、横断歩道を少し駆け足で人混みをくぐりながら渡ったときに「ああ、大人になりきれてないな、おれ。少年のままだな」と思った。毎日スーツを着ていたら、こんな風にはならなかったのだろうか。決まったタイミングで、決まった報酬が支払われ続けるシステム、なんかちょっとおかしいよな。おれ、何者なんだろう。
 大好きな音楽は依然と大好きなままだし、好きだった芸能人はちゃんと生きている。みんな同じように年を取り、街並みもちょっとずつ変わっていくけれど、あからさまな変化があるわけじゃない。心が柔軟に動いているのか、時代が思ったよりゆっくり進んでいるのか、変化を好まないはずの僕でもなんとかついていけるスピードでまわりはぐるぐると景色を変えていく。
 結婚適齢期って言葉はなんか嫌だな、と風呂に入りながら思った。誰だよ、適齢期決めたの。まわりがどんどん結婚しはじめているのを「まあ、そういう時期だもんな。おめでとう」とか思っていたけれど、よく考えたらなんかおかしい。これだけ世の中に男女がいるのに、そんなばっちりなタイミングでばっちりな人を選べているわけ?9割ぐらい妥協してんじゃねーの。ほんとに確かめあったのか。それがお前の愛なのか。
 結婚のタイミング、10代だって、50代だっていい、自分のしたいときにすればいい。子供のこととか、そんなこと考えなくていい。そんな紛い物の幸せのために生きているんじゃない。とか考えたけど、たった一度の人生なら紛い物でも幸せを感じたほうがいいのか。そんな風にも思った。
 大好きなバンドは、僕の人生に大きな影響を与えた。どうしようもない高校時代に、もうほんとにドン底で、精神のドン底っていうよりは、思考のドン底っていうか。考える力はあるんだけれど、答えの見つけ方がわからなくて、探す力だけがある、って感じ。そんなときにバンドが与えてくれた言葉が、僕の世界を180°ひっくり返して、いままで見ていた景色や、受けといっていた言葉が、「すべて考え方次第」と優しく背中を押してくれた。その後にアランの幸福論を読んで「世の中のほとんどの悩みは、考え方で解決できる」と思った。まあ、んなことねーよって声がたくさん聞こえてくるんだけど、それが僕がまだまだ少年なんだなと思う所以なのよね。甘いんだよ、世界の捉え方が。でも、こんなことをずっとぼんやり考えている。
 いつの日か命が尽きること、それをいつだって僕らは考えなきゃいけないはずなのに、のんびり幸せに腰かけて「もうすぐ夏だね」なんて言葉を吐いている。たまたま僕らはこんな時代を共にすごているけれど、理由なんてない。理由なんてないことが、こんなにも儚いなんて、そんな馬鹿らしいことがあるのか。人間はどうして考える力なんて持ってしまったんだろう。考えたって無意味なのに。こんな無意味なことなんてあるか。意味を見出すのは人間だけなのに。でも動物的に生きたんだとしても、それはそれでどこか悲しい。だってこうやって言葉を綴れる自分がどうしてか愛おしかったりもするから。
 ここ最近は、自分の暮らしをどういう風に豊かにするか、ということを考えたりしている。それはどうしてかというと、きっと豊かな暮らしが豊かな心を育むと思っているからだろう。余裕のある心を持てれば、見えてこなかったものも見えてくるのかもしれない。最近はなにをやっていても虚無だ。いままで感じていた虚無とはちょっと違う種類で、精神的には低空飛行に違いはないのだが、「生き甲斐」を無理矢理与えられている感じだ。ステレオタイプな生き方を与えられて、着々とこなす日々が人であると無理矢理思い込んでいるようなイメージ。ああ、僕はいったいどこにいくんだろう。この言葉はどこに漂流するんだろう。
 死にたくないとすら思わないここ最近の自分が不思議だ。もちろん死にたくはないんだけど、そこまで深く思考が及ばない。思考の奥に潜り込む作業がだんだんと苦手になってきている。これは、もしかすると神様の陰謀なのか。年を取ればとるほど深く考えないように人間の脳はプログラムされているのか。ゆるやかに死に迎えるように。そんなことを昔考えていたような気もする。
 ダメだ、だから自分自身に、もっとリスクを背負わなくては。鼓舞するのだ魂を。このままでは、少年のままで終わってしまう。せめて青年にならないと……。あれ、すげーアホなこと言ってる?