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Best Album:ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト/NICO Touches the Walls[レビュー・感想]

これまで5枚のアルバムを発売してきたNICO Touches the Walls
3枚目のシングル「Broken Youth」でMステデビューし、順調なスタートを切り開き、
大衆バンドを目指して、ポップスとロックの狭間を彷徨いながら実験的なことも多くしてきた彼らがようやくベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」を発売。そんな感想、質素なレビュー。

現在もオリジナルのライブハウスで独占イベント「カベ ニ ミミ」を演っている彼らのベスト盤をちょいちょいと書いてみる。
僕は何より初期が好きで、今回の初回特典の"Walls Is (re)Beginning"なんかはとても嬉しかった。
プレイヤみたいな曲は、よくもわるくもきっと青臭い頃にしか書けない曲なんだろうな、と思うしいまと一味も二味も違っていい。

ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト(初回生産限定盤)(DVD付)

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今回のベスト盤は、新しい曲から過去の曲へと遡るような構成になっており、つまりは新曲「ローハイド」から始まる。
鮮烈なギターのリフから始まり、サビまで疾走するサウンドとメロディーが突き抜ける。
歌詞の内容もまるで自らのデビューからの歴史を振り返る様な“「踏み鳴らされた大地にまるで興味なんかないし」”といったフレーズ。
NICO Touches the Wallsの最大のインパクトとまでは言わないが、わかりやすく、ポップスもロックも精神を忘れていないサウンドが鳴らされる一曲目。

準備オーライ/準備オーライ/いざ/ローハイド(ローハイド/NICO Touches the Walls)

前置きにも書いたけれど、NICO Toches the Wallsの魅力は、そのロックとポップスの中間に常に居続けていることだ。
外れ者にもならず、流行にも溶け込まず。
「手をたたけ」のような絶妙なポップソングを産みだしたかと思えば、「妄想隊員A」のようなキツく歪んだギターサウンドのロックとか。

そんな中でも、「Mr.ECHO」といったメロディーにならってメッセージが胸の奥にスッと流れ込んでくるような優しい歌声の楽曲も作ったりする。
こういったシンプルな構成の曲こそ、バンドのアンサブルは試されるものだと思っていて、ドラムも常に常にと構成を変えているのに、主張しすぎないように後ろで鳴っている。
オープニングのアコースティックギターアルペジオが活き続ける音を足し過ぎない構成と、サビでエコーのかかったボーカルのある意味では実験的なサウンド、間奏のなだらかなギターソロ、それぞれの楽器が、彼らがプロとしてそこに在ることを思い知らされるように綺麗に鳴っている。

彼らのロックと言えば「マトリョーシカ」や「N極とN極」なんか、L-Rで鳴らされるギターがかっこよくて代表するものなんじゃないだろうか。
「N極とN極」なんかは、メリハリがすごくうまくついていて、しっかりと芯のついたベースや、鳴らすとことはきっちりと鳴らすドラミングが、楽曲そのもののサウンドを支えているのではないかと思う。とにかくこの曲歌詞も含めて好き。
初期のNICO Touches the Wallsには成し得なかったけれど、これぞニコ!と呼べるような遊び心が詰まった渾身の楽曲。

遺書を書いてる僕の気持ち/他人とキスする君と同じ/僕らはこんなにお互い似てるのに(N極とN極/NICO Touches the Walls)

なによりこんなフレーズを思いついちゃう光村氏はすごい。“遺書”というフレーズをこんなにも違和感なく、サウンドに消化してしまうなんて。
ひとつひとつの言葉はバラバラなんだけど、ひきあったり、はじきあったりして、気付いたらどの言葉かが音と共に脳にはりついて離れない。
一方で「マトリョーシカ」なんかは、ギターサウンドがきっちりと楽曲を支えていて、掻き鳴らすギターと、息の合ったバンドのアンサンブルが命を吹き込んでいる楽曲。
演奏していてきっと楽しいだろうな、っていう。

「かけら〜総べての想いたちへ〜」「ホログラム」は、時期的には大衆バンドを完全に目指していた頃なんだろうか。
この頃のNICO Touches the Wallsは、個人的に個性を失ったような気がしていた。
いい曲なんだけどね。
別にニコが書かなくてもいいよなーっていう。
むしろバラードならバラードで、「梨の花」や、このベスト盤には入っていないけれど「芽」のような楽曲こそが、NICO Touches the Wallsこそが書けるロックバラードであって、響かせる個性ある楽曲だと思っている。
それでも、「かけら〜総べての想いたちへ〜」はPVなんかもドラマ性があって、決して手をぬいた楽曲じゃないし、情景描写が美しい。

いま、思い出したけど「トマト」もいいね。

あと、このベスト盤、「ビックフット」入ってないんか!

どん底のスーパーヒーロー真似たみたいな/目つきがやたら本気な少年/
退屈なBGMが鳴りやんだら/妙に胸高鳴ったけ(ビッグフット/NICO Touches the Walls)

ビックフットは、NICO Touches the Wallsのある意味の転換期となった一枚のようにも感じていたんだけどなあ。

そこから「THE BUNGY」「Broken Youth」「梨の花」「image training-2014-(新録)」と初期NICO Touches the Wallsの楽曲へ遡っていく。
Broken Youth」なんかは、ドラムレコーディングの際、足を骨折していたのが原因で常にハイハットを開いた状態のままの収録(故にずっとオープンハイハットで鳴っている)というぶっ飛び具合。
アルバムバージョンだか、シングルバージョンだか忘れたけれど、前奏が長く収録されているのもかっこよい。
とにかくサビの伸びやかなメロディーと、前へ前へ進んでいくバンドサウンド、なにも怖いものなどないと思わせてくれるような全身全霊のニコの声援がリスナーの背中を押してくれる。
NICO Touches the Wallsとしての勝負の一曲となったであろうし、いまになっても色褪せない、個性溢れる、没したりしない“強い”“最強”な楽曲。

空っぽな理想も/紛い物な愛もいいや/全てはバカバカしいシーンだ(Broken Youth/NICO Touches the Walls)

「梨の花」は何種類かバージョンあるけど、僕は「runova x handover」に収録されているやつが一番好きですね。
イントロのギターのリフがこれだけ最高です。絶妙な歪み具合。
正直、別のバージョンだと中だるみするときもあるんだけど、このアルバムに収録されているやつはイントロから終始ギターの音だけずっと聴いててヤバイ。酔えるギターです。

そして、新録の「image training」と新曲の「パンドーラ」で時系列を掻き混ぜたこれからのNICO Touches the Wallsを提示してベスト盤は一旦締められる。
いままでにない“新生”を感じさせながらも、過去を踏襲したサウンド、特に「パンドーラ」なんかはごちゃ混ぜな歌詞をうまいぐらいにメロディーに乗せる。

蝉時雨/L→Rが渦巻き/眩暈する/誰か俺を救ってくれよ(パンドーラ/NICO Touches the Walls)

DVDを見て感じたことだけれど、やはり初期のニコっていうのは、文章や小説でいう“行間”ってものを非常に大事にしていて
“音が鳴っていない部分”もしっかりと存在感を出しつつ、シンプルにも大胆に、それにポップスに媚び売らずに楽器が鳴らされていた時代だったなあ、と思う。
だから「プレイヤ」がやっぱり好き。

見たことないわけじゃないんだ/彼方のユートピア/行き場を失って散りゆくことが/怖いだけ(プレイヤ/NICO Touches the Walls)

Walls Is Beginning

Walls Is Beginning

ひらすら前向くしかなかった/あなたの足跡は/いつの間にかブレイバ/恐れるものは何もない(プレイヤ/NICO Touches the Walls)