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pilgrim/山田稔明[レビュー・感想]

GOMES THE HITMANが大好きで、どのアルバムから感想を書こうかなあ、と思っていた。
僕自身、思い入れがあるのは「mono」で、好きなアルバムは「cobblestone」「omni」だったりする。
しかし、現在進行形の山田稔明を語るなら、やはりソロアルバムの「pilgrim」「home sweet home」の何れかだろうな、と。

本作「pilgrim」はGOMES THE HITMANのギターボーカル山田稔明氏、初となるソロアルバム。
レコード会社やレーベルには所属せず、自身で制作から販売までを手掛けた。
“GTHC street team”といった地方にいるファンの協力によって広報活動?的なものが繰り広げられたり、まさに『新しい音楽プレイヤーの生き方』を提示しているアーティストの一人だとも思う。

前作「ripple」からは約4年ぶりとなる意欲作「pilgrim」をちょっとだけ個人的な視点で掘り下げてみる(もちろん、解釈はひとそれぞれ)。

「pilgrim」は日本語で「巡礼者」
旅路アルバム、と称されるように“これからの旅路”を感じるアルバム。

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M-1.harvest moon theme
“harvest moon”とは“収穫の満月”を意味する。曲名の由来については、monoblogでも取り上げられている。
秋の虫の音と、古びた本のページを捲る音、ゆらゆら揺れるキーボードの音。
“do you remember the night of september?”というフレーズが印象的。
物語の始まりを予感させると同時に、物語の終わりにも添えられそうな、序曲であり、フィナーレであるような空気を含んでいる。

M-2.blue moon skyline
ピアノと山田氏のボーカルで弾き語られるイントロ。
“携帯 鍵 サイフとカメラ 飴玉いくつかと読みかけの本”と荷物の確認から始まる。
アルバム2曲目ではあるけれど、僕個人は「harvest moon skyline」は序曲で、この「blue moon skyline」から本編が始まるイメージ。

展開が素晴らしくて、はじめ僕らはきっと家の中らスタートする。そして徐々に景色が広がっていって、鳴る楽器の音も増え、コーラスも加わり、ギターが歪み、ソロが入り、エフェクトのかかったピアノが際立つ。

この曲で、これから始まるこの「pilgrim」というアルバムの未来(可能性)を予感させるし、新生山田敏明の“バンド形態であったGOMES THE HITMAN時に引けを取らないソロとしての新しく魅力的な音楽の強さと形”を感じさせる。

あと、ギターソロかっこいい。

さあ どこへ行こう 誰かに会いにいこう(blue moon skyline/山田稔明)

M-3.clementine
これ名曲。
「pilgrim」というアルバムが「旅路アルバム」だとすれば、その「旅」とは人生にも置き換えることができる。
目的もゴールも、誰も設定してくれない、言うなればだだっ広い荒野にほっぽり投げられた僕らは、その有り余る自由の中で「人生の意味」を見出そうと踠く。
しかし、もがけどもがけどその手は空回りするばかり。

航海士、開拓者、宇宙飛行士、それぞれに描かれた心情は果たして「至福の果ての答え」なのか「空虚と葛藤の果ての諦念」なのか。

“風のない世界には/ほら答えがないみたいだ”というワンフレーズはボブ・ディランの“答えはいつも風の中”に対するオマージュなのかな、とか思ったりする。

M-4.夏の日の幻
切なくも風景描写が隅々にまで繊細に鏤められた夏の日の一曲。
なんとなく「cobblestone」や「weekend」期に入っていそうな、その頃のGOMES THE HITMANっぽさも感じる。
とにかくこの楽曲は情景描写や情緒的な表現、比喩など山田敏明節が存分にスパイスとして含まれた楽曲かと。

アコースティックギターの瑞々しいアルペジオと間奏のピアニカ(かな?)が刹那的でよい。あと、ベース!
そして、コーラスとハモり部分もいいな(いま、聴きなおしている)。

M-5.三日月のフープ
「pilgrim」が発売される前にこの楽曲だけmy spaceで先行視聴ができた。
四つ打ちの鳴りと、ミュートがかかったかっこいいエレキで一聴目でやられた!
歌詞がとても強気で、一方で終末感が漂っていて、かといって諦めとは違って、なんだか面白い。
こういう楽曲、GOMES THE HITMANにも、山田稔明にも少ないんじゃないかなあ。ロック?ポップ?

サビへ行くまでの徐々に盛り上がる感じ、静かに、待ち構えるように裏側でストリングスが鳴る感じ、闇の中を少しずつ裂く様に進んでいくサウンド
売れ線じゃないのに、きっと誰もが病み付きになっちゃう素晴らしくユニークな楽曲。
サビのストリングスの動きが好き。

M-6.pilgrim
名曲!
とっても語りたいけれど、あえてあまり言及せずにおく、この楽曲は!
とにかく切なくて、狂おしくて、愛しくて、でもちょっとだけ地味で(ごめんなさい)

僕は人生観の表れているアーティストが好きで聴くのだけれど、この楽曲は求めているものがとても形になっている、形にしてくれている楽曲だ。

人生は曖昧で、ずるくて、神様がいるようでいなくて、哀しくて、嬉しくて、どうしようもないんだけれど、たまに誰かがヒントをくれたりして、でも答えを出すのは“自分じゃない誰か”じゃない。

M-7.雨に負け 風に負け
かっこいい、という言葉が合っているのかなあ。
うまく言葉にできている気がしないのだけれど、決して弱気な楽曲じゃない。
個人的には、雨に負けて、風に負けて、部屋にひきこもっている歌じゃなくて、雨に打たれて、風に吹かれながら、ちょっとずつ進んでいるイメージ。

聴くたびに切なくなってくる。
きっと歌っていることはとても小さなことで、狭い事で、ローカルな部分なんだろうけれど、それがよりフォーカスされ過ぎていて、どうしようもない感じ。

重厚なアコギの音から始まり、バスドラの心地よいドラムが入り込んできて、エレキが鳴りだし、ベースが重みを増させる。
歌のメロディー構成がとてもシンプルなのだけれど、アレンジに変化をつけることによって曲の長さは6分半なのだけれど、飽きずに聴ける工夫が凝らされた楽曲。

単調なリズムでループさせながらも、間奏での変化の付け方が好き。
前半間奏のギターソロなんかも聴きどころだと思う。

M-8.SING A SONG
ライブでは盛り上げ役の楽曲。
とにかく一緒に歌おうよ!っていう。
素敵な三拍子。

リズムが心地よいのに加え、ピアノがとても大きな役割を果たしていると思う。
どれくらい製作期間があったのか分からないけれど、なかなか大変だったんじゃないかなーと勝手に思っていたりする。
地味にいろんな個所に、例えばハモりとか、コラースとか、ギターのエフェクトとか、拘っているんじゃないかなーって思う。

ピアノのこういうお洒落なフレーズっていうのはやる人がやれば簡単に浮かぶものなんだろうか?

この楽曲は「pilgrim」に収められているけれど「home sweet home」に入っていてもなんら間違いじゃないんじゃないかと思う楽曲。なにか意図があったりするのだろうか。
ささやかで、暖かで、時の流れは穏やかで、そういうところに幸せがあるんじゃいかと、そういう風に思う。

M-9.ONE
前曲「SING A SONG」の世界観を引き継いで始まる一曲。
「blue moon skyline」がピアノとボーカルで弾き語り始めたのに対し、「ONE」はギターとボーカルの弾き語りで始まる。

静かな情熱を感じる。
スピーカーで聴くと気持ちいだろうなーと。
ドラムのスネアの音がいい。

小さなメッセージが大切に込められた一曲。

M-10.ユートピア

僕はスルメ曲だと思うと同時に、ライブ映えする曲だと思う。
いつのライブだったか忘れたけれど、ライブで聴いたときドラムの音で感動してしまった。
世界観がでかすぎる。

正直、CD音源だと、僕の環境だと?あまりそのでかさは伝わって来ないのだけど、ライブで聴くとイントロでグワーッと世界観が広がって目の前にユートピアが出現れる。

様々な理想郷の名前をメロディーに乗せて歌う6分半の長編。

物語のはじまりでも、終わりでもない、草原にテントを張って、夜、真っ暗闇の中、星空を見上げながら「旅の途中」を思い浮かべる楽曲。

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もうひとつのアルバムについて。
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