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ジブリを見ると、現実に戻れなくなる。

千と千尋の神隠し (通常版) [DVD]

千と千尋の神隠し (通常版) [DVD]

昨日の金曜ロードショー(ロードSHOW?)、千と千尋の神隠し
僕自身、あまりジブリ作品を観る方ではないのだけれど、好きだ。
http://d.hatena.ne.jp/stock_flock/20110926/1317046451:コクリコ坂からは映画館へ足へ運んだ。
千と千尋は、風俗産業の話だとか、政治的な話だとか、様々な暗喩があると解釈されていて、どの見方もきっと正しい。
好きな見方があるということで、そこで僕も好きな見方をしている。

▼生きることと、死ぬことの物語
僕個人として、千と千尋は、「生きることと、死ぬこと」の物語なんじゃないかと思っている。

中学生の時から、ずっと印象に残っているシーンが「ハクを助ける為、銭婆に会いに千尋が列車に乗っていくシーン」だ。
あの時、蜘蛛爺が「昔は行きの電車も帰りの電車もあるけれど、いまは行きの電車しかなくて、専ら行ったきりだ」と千尋に伝える。
千尋「大丈夫、帰りは線路の上を歩いて帰ってくるから」と返す。

僕は、このやり取りは「産まれる」ことと「死ぬこと」の暗喩なんじゃないかなあ、と感じた。
片道だけの切符は「死んでいくこと」
本来なら、死んでしまうのだから戻ってこれるはずがない。だから、「行き」はあっても「帰り」はないのではないかと。

▼車窓から見える営みと、透明なひとびと
途中様々な営みが見えるのは、千尋自身の走馬灯の様なものではないかなあ、とか。
千尋自身ではなくとも、様々な人たちの思い出や、幻想、想像があの電車に乗せているのではないかと。

もっと言うと、はじめ、千尋の身体が透明になりかけたり、透明なひとたちがところどころ出てくるのは「存在理由がないひと」の暗喩なんじゃないかな、とも思っている。
千尋は「ここにいる意味、役割」を担っていないから透明になって、ハクからもらったものを食べることで身体を取り戻した。つまり「役割」を得た。
そして、働くことで「社会的役割」を得ることができた。

透明になって電車に乗っている人々は「役割を終えた」人や「役割を失くした」人たち。
変な話、死んでしまったら、誰もがその「役割」を失うわけだから。

▼お互いの決意、と思いが「生きること」へつながる
だから千尋の「帰りは線路の上を歩いて帰ってくる」というのは
「死ぬ覚悟」の暗喩であって

ハク自身が千尋を助けに行こうとしたときに湯婆婆に「あんたはどうなってもいいのか?(八つ裂き)」と脅された時のあの精悍な顔つきも
「死ぬ覚悟」の暗喩だったのじゃないかと

お互いがお互いを思い合っての決意と覚悟が表現されているんじゃないかなーっと。

主題歌「いつも何度でも」で歌われている“生きている不思議”や“死んでいく不思議”というフレーズがまさにこの物語を表現しているのではないかと勝手に考えている。
設定された年齢の幼い子供たちが勿論「生きること」や「死ぬこと」に対して覚悟を決めて誰かを思って―なんてそんな壮大な物語になってしまうのは俄か信じがたいけれど(フィクションだからいいんだけど)。
「誰かを思う決意」というのが、きっと「とんでもない奇跡」を起こしたり、誰かを救うことに繋がるんじゃないかって、そういう風にも捉えられる。

ジブリを見ると、現実に戻れなくなる。
いずれにせよ、ジブリ作品は色使いが素敵過ぎて胸が詰まる。
とにかく空の色が綺麗だと思う、ほんと。

そして、千と千尋に限っては、登場人物、千尋とハクの思いの強さと健気さに胸を打たれる。
コクリコ坂でもあったがとにかく“思いに一生懸命”なのだ。

思いに従順に生きて、素直に、そして健気にひたむきに。
感情に従順に生きるのとは違う、あくまで“思い”に従順。

あと「またどこかで会える?」「うん、きっと・・」が切なすぎて辛い。

▼振り返らないで
ハクが千尋に最後「決して振り向いてはいけないよ」と伝えたのは黄泉の国の話から来てるのかなあ、と思いつつ。
最後に宮崎駿氏が残した単純明快なメッセージでもあるんじゃないかと思う。

振り返り過ぎて、奇妙な世界に迷い込んでしまった千尋
ハクと共に徐々に前を向くことで道を切り開いていく
「また会うこと」を約束したハクは、後ろ側、振り返った場所にハクがいないことを知って欲しかったのではないかと。

前を向いて、未来のどこかにハクがいることを、未来にいるハクを探して欲しい、と。

・・・とかなんとか言ってみるけど、ここだけ彼らが子供だってことを考慮して考えると、「子供たちの別れ方」ってこんなにもさりげなくて、ささやかで、静かなんだよな、って感じる。

この「小さな何気ない別れ」が、「ずっと胸を掠める思い出」に変わるんだろうな、って。

となりのトトロ」のメイとサツキのトトロとの不思議な出会いと別れのように。