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Album:Design/TRIPLANE[レビュー・感想]

アルバム前作「V」では“進化したポップス”“バンドTRIPLANEの快進撃”と勝手に銘打ったのだけれど、
今作「Design」は“バンドとしての軸を越えたミュージック”と言えばいいだろうか。とにかく、いままでの彼らにとってこれは進化でも退化でも現状維持でもなく、突然変異なのだ。
明らかに「いままでのTRIPLANEはここにいます」ではなく、「あらたなデビュー」と言っても良い。
そんな彼らにとっての突然変異が起こったミニアルバム「Design」のレビュー。

一発目「light」は、バンドサウンド全開、疾走感満載のハイテンポで駆け抜けるキラーチューンだ。
軽快なドラミングから入るイントロは何度も聴きたくなるような癖になる曲であるし、たった3分にも関わらずすべてを惜しみなく出している。
とにかく楽器や、音を足せばいいという安易な発想ではなく、そのスピード感を出す為の彼らの試行錯誤が聴いてとれる緻密に組み込まれたアレンジ、構造。
ギターとベースとドラム、それぞれの楽曲のグルーブ具合がとにかくヤバイし、ひとつひとつのフレーズを抜き取っても格好良い音を奏でている。本当にバンドとしての強さを啓示している。
1stアルバム「home」の一曲目「ライナーノーツ」は個人的にデビューアルバムとしては至高の出来で、ハードルを易々と乗り越える強さと青臭さを兼ね備えていると感じたけれど、この「light」もまさに結成10年目を迎えた彼らにとっての至高の出来である。

抱きしめよう/澄んでいる虚像も/多面の実像も/全部束ねて照らす未来(light/TRIPLANE)

そのまま「V」で受け継がれた電子サウンドを活かした楽曲「one,two」へ。
とにかく、どれくらい試行錯誤したのか分からないけれど、メロディーと詞の当てはめ方が上手だなあ、と思う。
正直な所、いまのTRIPLANEの方向性は売れ線でもなく、マニアックな人にだけ受けるでもなく、いい意味でも悪い意味でも中途半端で、“ファンが喜ぶ音楽”になってしまっているから、ヒットする可能性は少ないんだけど、こんなにプロとしての実力を兼ね備えているのに、多くの人に聴かれないのは惜しいなあ、と思ってしまう。
アコースティックな側面を残しつつも、デジタルに溶け込ませる、その昇華レベルは非常に高い彼らの技量はもっと評価されて欲しいし、露出を増やしていってくれないかなあと思ってしまう。
けれど、アコースティックライブでは彼らのこの魅力は伝わらないのであろうし、ライブを見る限り、ライブでも魅力を最大限には引きだせてはいない気もする。
三曲目「distance」は四つ打ちのダンスビートと、1曲目2曲目にあるような複雑な譜割り活かしたミディアムバラード。
TRIPLANEと言えばAメロ〜Bメロ、そこからサビへのメロディーの飛び具合が非常に心地よいメロディーメーカーだけれど、この「distance」はメロディーに大きな変化は起こらずに、淡々と景色を映りかえてゆく。
そういう意味では、どこか物足りなさを感じながら、でもそれこそがこの楽曲の狙いであるのかもというような、すっきりとしない味わいが印象的な楽曲だ。
まさに曲の世界観を表す様な、恋愛の後のしこりを伝える様な空気感となっている。

僕が躊躇したその先に/寂しげな顔の君が居たんだ/迎えに行こう/迎えに行こう/夜が明ける前に/朝になる前に/静かに(distance/TRIPLANE)

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4曲目「Horizon Knot〜君と見てた夢」はTRIPLANEお得意のバラードにバンドサウンドを若干抑えながらも、現在進行形の彼らのスパイスを混ぜた様な楽曲となっている。
そして5曲目の「brunch」には、ゲストミュージシャンとしてkainastuが加わる。
コーラスと言うけれど、もはやサブボーカルと言っても過言ではないぐらい曲中の中で存在感を放っている。
記憶の底を擽る様な構成でリスナーの胸の奥へと歌詞が流れ込んでゆく。
情景描写とメロディーが非常に美しい楽曲で、きっとライブでも映えるだろうなあ、と感じた。
こういった楽曲は決して売れ線ではないけれど、“受ける楽曲”に違いはないだろうし、TRIPLANEの楽曲でも新しさを感じる。
メッセージを直接言葉に書かずとも、情景の中に寂しさや愛しさが紛れて、メロディーがそれを分解してリスナーの胸の奥へ粒子となって届ける。
そんな繰り返しが、この「brunch」ではボーカル江畑氏とkainatsu氏の優しく温もりあるコーラスによって表現されている。
次の「回遊魚」もゲストミュージシャンに「DAISHI DANCE」を招いたもの。
まさにダンスミュージックと言った感じで、暗闇とミラーボールが想像上に勝手に浮かぶ(笑)
アレンジに幅が効きそうな構成で、こちらもライブ映えするのではないかと個人的には思っている。
高揚感を引き連れ、そのままエンディングまでリスナーを引き連れていくハイテンションの止まらない仕掛け満載の楽曲となっている。
まさに止まるのをやめない“回遊魚”であり、“止まれない苦悩”をも抉り出す様なメッセージも含んだ決して派手なだけはないミュージシャン精神溢れる楽曲の空気が味わえる。

安らかな眠りのゴールまで/泳がせてよ/疲れ知らずなんだ(回遊魚/TRIPLANE)

「キミのうたボクのうた」は、そのタイトル通りで、誰もが誰もの唄になりえる、優しい歌だ。
誰もが自分の唄のように口ずさみ、ある時は演奏し、合唱し、勇気を与える。
彼の大切にしてきたメロディー、言葉を、できるだけシンプルに紡いだ輝き溢れる一曲。

希望に疲れて/夢に振り回されて/このまま静かに消えちゃったっていいや(キミのうたボクのうた/TRIPLANE)

そして「ファイターズと共に」が流れて、このアルバムは幕を閉じる。
このアルバム、いちリスナーとしては非常に満足のいく楽曲だったけれど、評価されるべきアルバムだとも思うけれど、「TRILANEというバンドはこの先もこの路線でいけるのだろうか?」と少し不安になってしまう要素も含んでいた。
正直1stアルバムから今作までいろいろな振り幅を見せられると、もっともっと新しいTRIPLANEが聴きたくなってしまう一方で、ヒットするバンドって似た様な楽曲を大量生産でいる強みがあるからヒットしたりするのも事実で。。。

兎に角、素晴らしいアルバムでした。
なにかこう、一発ヒットさせて、また実験的な楽曲をどんどん聞かせて欲しいです。