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Album:新世界/ゆず[レビュー・感想][後篇]

後篇、いきなり「う〜ん」って所から入ります。

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新世界(初回限定盤)

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▼遊び心と実験〜楽曲のアレンジ、ミックス、マスタリング
「幸せの定義」で短くも、フォーキーなゆずならではの世界観を提示した後に続くのは、
「Ultra Lover Soul」と「レトロフューチャー」である。ちなみに「Ultra Lover Soul」の作曲は寺岡呼人氏と北川氏との共作となっている。
しかし、この2曲は、個人的にはちょっと外し過ぎたのでは?と思う。

そもそもアレンジ、ミックスもなんだかちょっと微妙だ。
話はちょっと変わるが、今回のアルバムのマスタリングはMr.Childrenの最新アルバム[(an imitation) blood orange]、最新ベストアルバム「Mr.Children 2005-2010 」「Mr.Children 2001-2005 」のマスタリングも担当したTed Jensen(テッド・ジェンセン)が担当している。そこの良さは、ぶっちゃけ分かってない。
そして、アレンジ・ミックスは、ここ数年のゆずの方針(おそらく)として、様々な人が手掛けている。とはいえ、ミックスは主にセーニャの大渕氏が手掛けているのだけれど、この「Ultra Lover Soul」と「レトロフューチャー」のミックスを手掛けているのは、大渕氏ではないのだ。
だから、ってわけじゃないと思うけど、聴いていてとにかく音に違和感があるし、なんか籠っているように聴こえるし、ボーカル埋もれてない?楽器邪魔し合ってない?とか(言い過ぎだとは思います)、ちょっともう少しよくなる要素あったのでは?と思う。

特に前山田健一(ヒャダイン)氏なんかは、音の要素がめちゃくちゃあるのに、ガチャガチャし過ぎのはずなのに、うまく整理されているし、そこがギリギリのラインで“ゆず”として存在している、化学反応を起こせている良さだと思うのだけれど、いかんせん「Ultra Lover Soul」「レトロフューチャー」は未完成、実験的といったものを感じさせる。
世に出すには早かったかな、とか。
ゆずがやりたいことはよくわかるし、試したいこともわかるのだけれど、うまく消化し切れてない、これはおそらく「ファンだけが好んで聞く」楽曲になってしまうのではないかという懸念がうまれる楽曲だと感じた。
インタビューでは「大挑戦しているけれど、うまくゆずの曲になったのでは」と言っているけど…。

話戻って、楽曲の中身としては、とにかく“お遊び系”かつ“実験的”だ。
「Ultra Lover Soul」は、男目線の下心を描いた楽曲、顔文字が歌詞にある。
レトロフューチャー」はお遊び系ではなく、実験的な楽曲であり、ヘビメタの要素が非常に強い楽曲。
メッセージの強さ、方向性、訴え方としてはアルバム「WONDERFUL WORLD」の「眼差し」に似たものを感じた。

▼懐古的な、ひだまり、所沢
つづいて「ひだまり」はサビから始まる温かみのある楽曲だ。
“ほらいつもよりも素晴らしい朝だよ”という岩沢氏と北川氏のハーモニーが美しく、
バックでは、ホーンの音が広がるように響く。

夢追いかけながら旅立つ君に/僕はどんな声をかけただろう?/
少しの羨ましさを隠しながら/巡る季節をまた教えたろうか(ひだまり/ゆず)

ある意味では、こういった楽曲も、いつかのゆずにとっては「新しいゆず」であったはずで、
いまとなっては見事に、それぞれの楽器と調和して、存在している。
原型も見える、けれど、それを素晴らしく華やかにしている、ある意味では呼人氏のプロデュースに似た楽曲だ。
昨日あったことも、今日あるあることも、明日のことも、そんなことよりもとにかく
目の前の素晴らしい景色を見つめたらいいじゃないかと教えてくれる。
大事なことを大事なように見つめ歌う、ゆずの良さが表れている。

そして、おそらくファン待望の音源「所沢」
インタビューでは「古いようには歌えないから、古いものをいまのやり方でやった」と言っていて、
まさにその通りになっていると思う。

一番大事な時なのに/一番最後に後回し/
こうして一緒にいる時も/チャンスはずいぶんあったのに(所沢/ゆず)

たぶん賛否両論のアレンジだと思うけれど、僕はこれでいいと思うし、
こういう形で世に出すのがギリギリOKなんじゃないかと思う。いい意味で。
「春風」の時は、デモテープの、あの地味さこそが「春風」の一番の良さだったのに、なぜあんな壮大に…とがっかりしたけれど、「所沢」に限っては、あの軽快で無責任な世界観の方向性でブラッシュアップしているから、曲の世界観が壊れていない。
それにしても、歌詞の内容はとても青臭くて、良い。
みんな誰もがこういうこと考えてたろうな、っていう。

▼新たなポップス「守ってあげたい」
最近のゆずの挑戦の仕方、個人的には「半分くらい失敗してない(笑)?」って思うものあるけれど、
この「守ってあげたい」は素晴らしい出来だと思う。
ゆずのセルフプロデュース楽曲となっているんだよね、クレジットみると。

コード進行と、メロディーも単調には収まっていないし、
サビの四つ打ちの入れ方とか、二番Bメロのコーラスの入れ方とか、
ストリングの主張しすぎない鳴り方とか、とにかく素晴らしい場所がたくさんあるポップスで、
歌の内容よりも、アレンジをこんなに語りたくなるのも珍しい。
唯一、大サビの前のエレキの音がダサい(笑)

それにしても、この楽曲は「ポップスとしての、ベタなバラードで終わらない新しいベタなバラード」っていう、
大きな枠でとらえて自信を持って良い!と言える形だと思う。

▼フォーキーな四間道路、友〜旅立ちの時〜
「四間道路」は「トビラ」の「午前九時の独り言」のような、弾き語り、独り語りスタイルの曲。
そのうちピンとくる日が来るのかな、いまのところピンと来ていない。
なんというか、フレーズのひとつひとつの情景が、僕の頭の中に全く浮かばないのよね。

こういう曲ってやはり、相手の思い出の中にどれだけ迫って行けるか、というのがポイントだと思っていて。
まず「四間道路ってなに?」ってところから僕ははじまってしまう。
ちなみに、こういうスタイルだと馬場俊英さんの「人生という名の列車」が個人的には情景浮かびすぎて素晴らしいと思う。あと、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」かな。

何もかもを脱ぎ捨てて/あの夏の海に帰れたら/
自由を気取ってた/あの夏の海に(四間道路/ゆず)

ただ、このフレーズに限っては「もしや夏色のことか?夏色のPVのことを言っているのか?!」と(笑)
もしかしたら、ものすごく個人的な楽曲なのでしょう。

「友〜旅立ちの時〜」は「Hey和」的な、無難な締めの一曲でございます。
インタビューで「おじさんたちの歌う「友 〜旅立ちの時〜」も聴いてほしいですね(笑)。」とあるけれど、
そういう気持ちで聴いてます。

▼おわりに
ここ数年のアルバムだと「FURUSATO」「2-NI-」が大好きな僕ですが、
今回のアルバムは期待を越えなかった、という所です。一番好きな曲は「幸せの定義」でした。
やっぱ「おっちゃんの唄」と「所沢」が収録されているっていう誘惑には勝てなかったかな。「値札」とか。

それと、こんな時代にも関わらず、シングルもアルバムもCDでしっかり出していくゆずのアーティストとしての姿勢、とても好きです。


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