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Album:小さな生き物(スピッツ)×レビュー/感想

スピッツにとって14番目のアルバム。
そういえば、スピッツってユーミンの14番目の月、カバーしてたよね(いきなり脱線)。
そしてアルバム「三日月ロック」から続く亀田プロデュースは健在(僕はあまり好きではない)。

スピッツにしては、珍しくデラックスエディションなんかで発売しちゃって、発売形態が3つある。
もちろん、いちばん高い物を買えば他は買わなくていい仕様にはなっているのだけれど、それでもAmazonとかで買わないとそこそこお値段しちゃう。
ちょっとレコード会社、暴走しすぎだよね!

スピッツが民放出演した「オトナの!」もまだ見終わっていないのだけれど、アルバム「小さな生き物」とは人間のことを指しているといったことを匂わせていた様な。
おそらくリード曲もタイトル曲である「小さな生き物」で、MVも制作されている。

それと、アルバムジャケットに男性って何枚目ぶりだろうか。
メンバーであるとか、子供であるとか抜いたら、はじめてと言ってもいいのでは?

そういう意味で、今回のアルバムは今までのアルバムより、ずいぶんと前向きだと思う。
前作「とげまる」は意志が強くて、サウンドも重くて、お腹いっぱい、ってな印象だったのだけれど
本作「小さな生き物」は意志は強いけど、それを軽やかに滑らかに綴っていく様な、個人的に好きな「隼」に少しだけ近い。

そして、なにより久々にスピッツとしてのバンドサウンドが活きているアルバムだと思う。
個人的には、亀田プロデュースが好きではなかったのが、スピッツとしての「雑味」とか「軽さ」みたいなものが綺麗に削がれて
毎度毎度のアルバムがフルコースで、出される料理すべてが綺麗に仕上がっている、というイメージだったからだ。

今回のアルバムは、同じ亀田さんのプロデュースだけれど、どこか、それ以前のスピッツを彷彿とさせる。

[小さな生き物:スピッツ]

小さな生き物

小さな生き物

M-1,M-2:未来コオロギ~小さな生き物
例えば、いっせーのせ、でバンドサウンドが広がる「未来コオロギ」は、もうまるでクライマックスみたいなノリだ。
アコースティックギターの音が、曲にとてもマッチしていて、Bメロからのエレキのミュートも効いている。
なにより、ドラムのスネアの音が抜群に好きだ。ラスサビ“君に捧げよう〜”のスネアのストロークが格好いい。

とにかくここにいるのは、大人になったスピッツで、もう弱音なんか吐いたりしない、僕らを引っ張って行ってくれる。
僕にとってのスピッツは、自分のことでいっぱいいっぱいでダメな男を歌って、どうしようもないのに、その癖キザで、ってやつだったんだけれど、
アルバム「三日月ロック」あたりから、その詞の世界観は変わり始めていて、誰かに手を差し伸べる様な、そういう歌が増えた。

本作「小さな生き物」は、そういうメッセージがいままで以上に洗礼されて綴られていると思う。

時の流れ方も/弱さの意味も違う/でも最後に決めるのは/さっきまで泣いてた君(未来コオロギ/スピッツ)

アルバムタイトル曲であり、リード曲のひとつでもある「小さな生き物」は、どことなく「僕のギター」を彷彿とさせるような、
エレキギター一本でも弾き語りできるのをイメージしたぜ!ってな曲。
ミディアムテンポでこれといった大きなギミックはないシンプルな楽曲なのだけれど、歌の中には小さな決意が鏤められている。

これはきっと、ボーカルである草野氏自身の中に芽生えた、このアルバムそもそものきっかけであって、それを僕らが端から眺める様な、そういう個人的な曲なんじゃないかな、と思っている。
思ったことをそのまま、シンプルに吐き出した、決意の曲ではないかな。

M-3:りありてぃ
そのままアルバムは3曲目「りありてぃ」へと移っていく。
僕は、この曲、アルバムの中でも好きな曲上位に入ります。

エレキギターの歪みが曲のイントロを引き寄せて力強く始まっていくのだけれど、とにかく詞が好き。
曲そのものは、どことなく「ローテク・ロマンティカ」を思い出しました、個人的には。
あれぐらいのサウンドの軽さがあってもよかったかもしれない、と勝手に思ってしまう。

Bメロの「変わったやつだと言われてる〜」からのメロディーもとにかく最高だけれどね。「仲良し」みたいな感動のメロディーライン。
僕の中の、アルバム「小さな生き物」のリード曲は、「りありてぃ」です、ってぐらいに突き抜けている。
バンドサウンドとシンセが、スピッツの中でも素敵に調和した、楽曲じゃないだろうか。

まったく興味なかった/ドアノブの冷たさにびびった(りありてぃ/スピッツ)

M-4,M-5:ランプ~オパビニア
バンドサウンドいっぱいの曲が続いた後、アルバムはシックな楽曲「ランプ」へとムードチェンジする。
ベースとアコースティックギターが心地よく鳴る楽曲。
とにかくこのアルバム、ひとつひとつの楽器が、繊細に心地よく鳴っているよね。雑味も落とされ過ぎてない。

そして、ここの詞でを読んで思うのは、やはりスピッツはイケメンになったなあ、っていうこと。

女々しさが全くない。
僕は「隼」というアルバムがとにかく好きなのだけれど、あのアルバムは男の女々しさでいっぱいなアルバムだ。
最初から最後まで、どこまで過去に縋っているんだよ!と思わせるような詞の数々。

でも、「スーベニア」〜「さざなみCD」あたりから、草野氏の書く詞は格好良くなって、男らしくなって、モテる男の詞になった。
いままで、特に初期のスピッツのラブソングなんかは、女性側からしたら下手したら「気持ち悪い」と言われるような、男の独りよがりの歌が多かったことに対し、
最近のスピッツのラブソングは、ただ純粋に愛を歌って、その歌すらも責任を持って歌うような、「女性が歌われたいラブソング」に変化しているような気がする。
なので、モテない男は共感できないことが多くなってきました。
でも、今回のアルバムは、そうでない楽曲も多い、なぜかいろんな時代のスピッツをあっち行ったり、こっち行ったり。
と言ったような余計な感情を抱きながら、「オパビニア」は既にネットなんかでもずいぶんと人気の楽曲に成長したようで。

これもまたオルガンがいい味出している。
そして、スピッツの得意なアレンジ、というか、格好いいよね。
インディゴ地平線の頃に合ったような恋愛に前向きで真っ直ぐな青春の歌のイメージ。
例えば、「バニーガール」とかサウンドはちょっと違うけど「花泥棒」とか思い出した。
とにかくキザに格好つけて、転んで泥まみれでも、取り返すのさ。

M-6,M-7,M-8:さらさら、野生のポルカ、scat
そうそう、「さらさら」「僕はきっと旅に出る」については、多くを下記で書いているので、よろしくお願いします。
さらさら/僕はきっと旅に出る×スピッツ[レビュー・感想] - 今日もご無事で。

「さらさら」はとにかく名曲だね、相手を想うことを綴った楽曲ではスピッツの中でも一流だと思う。
独りよがりなラブソングでもあるし、でも相手を想い過ぎているからこそでもあるし、弱さしかないけど、その優しさが強い、っていうか。
それを踏まえての「僕はきっと旅に出る」なんかは、聴いたらすぐ泣きます。

眠りにつくまで/そばにいて欲しいだけさ/見てない時は自由でいい(さらさら/スピッツ)

「野生のポルカ」はあれかな?
スピッツでいう変化球かな?とかいいつつ潮騒ちゃんもあるけれど。
バンドサウンドと縦笛が相性よすぎて困る(戸惑いを隠せない)

そこから突き抜けていくスピード感は、「けもの道」みたいな野生街道まっしぐらである。
演奏したら気持ちいいだろうなあ、って言う楽曲。
“武蔵野”という特定の地名が出てくるのもいろんな意味で嬉しい。

そして「scat」
多くを語れたりはしないけれど、このアルバムは、スピッツなりの幅の広さを試している所が素敵。
「野生」とか「生き物」とかをモチーフにして、音像の中でもそれを表現しようとしているのだろうな〜、なんて。
勝手な予想。

M-9,M-10,M-11:エンドロールには早すぎる、遠吠えシャッフル、スワン
そして巷で大人気の「エンドロールには早すぎる」
ヤバいね。(語彙のなさ)

「まもるさん」でも感じられたような、ダンスロックチューン。ロックだけど、ダンサンブル、といったような楽曲。
そこに切ない詞が加わって来るので、そのギャップにリスナーはグッと来てしまう。

詞の世界観は、とにかく今まで以上にストレートで、いい意味でスピッツっぽくなくて、僕らに刹那を訴えてくる。
詞だけで言うなら「隼」の中とかにありそうなぐらい、「放浪カモメはどこまでも」エッセンスが混じってます(個人的に)。
別のアレンジでも正直、聴いてみたい。

おかまいなしに/めぐりくる/季節が僕を/追い越しても(エンドロールには早すぎる/スピッツ)

「遠吠えシャッフル」は、よくもわるくも「スピッツだね」と感じさせられる楽曲。
それでもちょっと昔のスピッツで、このイントロ聞き覚えある!(え)
テイタム・オニール」かな、と思いつつなんか違う。

と、あまり多くを語れないまま「スワン」へ。「スワン」は、どことなく「フェイクファー」っぽさを彷彿とさせる。刹那をさらり、と歌う、というか。
しっとりと、しつこくなく、さっぱりと仕上げた料理。アルバム「フェイクファー」とかに、さらりと入ってそうな。

M-12,M-13:潮騒ちゃん、僕はきっと旅に出る
そして「潮騒ちゃん」去年のゴースカで披露された楽曲。
遊んでいる様で、遊んでない、ちょっと真面目な楽曲。

「りありてぃ」もそうだけれど、同じメロディーを繰り返すところとか、癖になってしまうよね。
疾走感のあるサウンドと、メロディーで僕らを引き連れて、それでも背中を押してくれるような言葉の数々。
あなどれない強さと、印象的なギターのリフとか、聴きどころ満載な楽曲。

あとは、博多弁はいってるとこ、聴きどころかね。

Bメロの「夢なら〜」の部分のメロディーラインはとても綺麗で心地良い。

偉大な何かがいるのなら/ひとまず/放っといて下さいませんか?(潮騒ちゃん/スピッツ)

そしてシングルで発売されていた「僕はきっと旅に出る」で、アルバムのムードをしっとり落とした後、
ボーナストラックの「エスペランサ」が入って来る。
個人的には勝手に「エトランゼ」と見間違えたよ。

M-14:エスペランサ(bonus track)
最後のシメが、こういう楽曲、っていうのもいいよな〜と思う。
それこそ「エトランゼ」もそうだけれど、「旅の途中」とか(あ、あれはシメじゃないか)、「君と暮らせたら」とか。
このアルバムの中でもっとも初期のスピッツを彷彿とさせる楽曲ではないか。(言葉数少ないからかな?)

「小さな生き物」は、
わずかな希望と想像力を僕らに託して、終わりを告げる。
まるで僕らには、次へ行くステップなんか教えてくれないけれど、
いつもより「なんとかやれよ」って元気をくれた気がしました。

みんな想定より/弱いと思う/ガラスの玉が/坂を転がる(エスペランサ/スピッツ)