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SINGLES 04-12/TRIPLANE

TRIPLANEは今年で結成10周年を迎える。そんな彼らのデビューした2004年から2012年までの8年分の集大成。

今月号のロッキングオン・ジャパンでTRIPLANEは「TRIPLANEというバンドをまだまだ知らないひとたちがたくさんいる。そんな人たちにまずは知ってもらって、それから自分たちの良し悪しを判断してもらいたい。まだ良し悪しすら判断してもらえる段階に来れていない」と言ったようなことを語っていた。彼らが目指すのはあくまでオリコンチャートの頂きだ。それまでの道のりの一部を凝縮することとなる今回のベストアルバムシングル集。このベストアルバムシングル集がヒットの起爆剤となってくれたらいいな、とファンの誰もが思っているだろう(けれど、宣伝が全くない!気がする)。

[Album:SINGLES 04-12/TRIPLANE]

M-1.ドリームメイカ
TRIPLANEにとって現時点での最新シングル。サッポロビールのタイアップ曲であり、前回のタイアップ曲である「イチバンボシ」に続いて最高にアップテンポな楽曲だ。5thアルバム「V」で随所に見られた“バンド+デジタル”の融合が感じられ、TRIPLANEという10年以上の経験があってこそ培われた安定感のあるバンドサウンドに、シンセの音が目一杯取り込まれ“未来感”のあるまさにこれから夢を作っていく様な希望の感じられる楽曲になっている。
これが、バンドとしての能力が中途半端だったり、あまりにもデジタルな音に頼り過ぎてしまうと、サウンドが崩れてしまい、あまり軽快さのない楽曲になってしまう。が、TRIPLANEは見事に「ドリームメイカー」を疾走感あふれる爽快なデジタルポップに仕上げている。

快速エアポートの窓を埋め尽くす/広大なジオラマを/眺めながらビールを喉へと流し込んで/リクライニングして目を閉じた(ドリームメイカー/TRIPLANE)

M-2.Cheers To Us feat. ダニエル・パウター常田真太郎スキマスイッチ
ピアノのイントロもさることながらそこに介入してくるストリングスの心地よい響き。ドラムの音が心地よかったり、ドラマチックなアレンジになっていたり、あるようでなかった新鮮味のある楽曲。
なによりダニエル・パウター×常田真太郎(スキマスイッチTRIPLANEのコラボという豪華さ。
ライブで聴けた人は音楽に酔い痴れる感覚をこの楽曲で味わっただろうな、と想像したくなる。

Don't give up, don't give in/何もかも予定と違うけど/Don't give up, don't give in/それすらも受け入れて/乾杯しようよ/raise your glass/明日の糧にさ/今日の報いにさ(Cheers To Us/TRIPLANE)

M-3.モノローグ
たしか「エナジー」というデジタル配信限定の楽曲が発売された後の楽曲だったかな?個人的には全くその予兆は感じていなかったし、失礼なことを言うと3rdアルバムあたりの方が、そういうムードは漂っているのだけれど、ボーカルの江畑氏からすればスランプの時期に陥っていた時に産まれた楽曲らしい。
でも、リスナーとしても初聴の衝撃は少なからずあった。バラードであったから、イントロからガツンと頭を殴られたような衝撃ではないが、「どうやってこのイントロを思いついたのだろう?」と思ってしまうような滑らかなピアノとストリングスで幕の開かれる、なおかつ“小さな生活”を綴ったバラード。
個人的には“伝えようなんて/そんな大それてない”というフレーズがグッと来た。本来、歌にとっても、人間にとっても、人を支えようとするときに大事なのは、ただそこにあって、そこにあることで、ちょっとでも相手が、その思いを汲み取ってくれる、そういう関係なのだと個人的には思っているので。

M-4.スピードスター
デビューシングル。女性歌手のhitomiに提供されていた楽曲をセルフカバーしたような、とはいえ向こうはタイトルがちょっと違うんだけど。その辺りは大人の事情がありそうな。
エレキギターのシンプルなバッキングからスタートするのだけれど、歌っていることとか、アレンジとか、すごくバンド感が出ている。そこに青臭さとか、多少の拙さとか、それでも勢いに身を委ねてバンドが疾走している空気感が表現されていてライブ映えする、つまりはバンドの成長と共に進化していく楽曲のひとつに違いない。
現在に至るまでのTRIPLANEの軸は確実にあるし、才能の片鱗をこの「スピードスター」から感じ取れることも間違いない。

長い長い歴史を紐解いたら/同じような事の繰り返しで/流行りものなども/きっとそうだろうってうなずけた(スピードスター/TRIPLANE)

M-5.アイコトバ
なんだか分からないけれど、とにかくクセになる楽曲。この楽曲が発売される前までが、個人的には「TRIPLANEってバラードしか書けなくなっちゃったの?お腹いっぱいだよ・・・」と感じていた頃だったので、そこに一石を投じる一曲になったと思っている。
とにかくガッツリとしたバンドサウンドに、かっこいいアコースティックのストロークが上手く調和して、ドラムのリズムがクセになる感覚を産みだしている。
中毒性のあるバンドサウンドがとにかくこの楽曲の魅力だし、この「アイコトバ」をターニングポイントにTRIPLANEはまた再浮上を始めたようにも思う。彼らのメロディーをバンドとしてどう活かせるか、バンドでなくてもメロディーありきではなく、メロディーとサウンドがどうやって上手く調和するか、化学反応を起こすか。
とにかく、このシングル以降のTRIPLANEは病み付きになってしまうようなサウンドの楽曲が増えていく。
作詞は珍しく(というか後にも先にもこの楽曲だけ?)、江畑氏とMakoto ATOZI氏の共作である。

M-6.Dear Friends
ワンピースのエンディングテーマ。この楽曲でTRIPLANE知名度を上げたようにも思える。
もとを辿れば彼らの個人的な思いの綴られた楽曲であり、元バンドメンバーに向けた楽曲でもある。ワンピースでも「ウソップとルフィ、そしてメリー号との別れ」がテーマになっていた頃だと思うのだけれど、「お互いがお互いを思いやったままの別れ」の辛さ(とは一概に言えないかも)を綴っている。
「スピードスター」「あの雲を探して」「Reset/ゲンジボタル」とアップテンポな楽曲が続いていた彼らにとって初のバラードシングル。それもバンド感が強く前に出た情熱的な楽曲となっているので、これでがっちりと心を掴まれてしまう人も多いと思う。

M-7.君ドロップス
TRIPLANEの魅力が活かされながら完成された至極のポップス。Aメロからサビまでの美しい流れとか、ドラムのハイハットの繊細な音、アコースティックギターの煌びやかなアルペジオ、すべてが楽曲を彩っている。TRIPLANEはときどき“売れ線”という部分で勝負したような楽曲を作る時があって、この楽曲も勿論狙っているのだと思うけれど、その思惑が透けて見えない、単純に誠実な音楽としてただそこにある空気が僕は素晴らしいと思う。
特に歌詞で描かれる情景と、バンドのアンサンブルがとにかく絶妙にマッチしている。ラブソングではあるが、人間の感情の揺れ、繊細さ、不安定さがバンドによって綿密に表現されている。
この楽曲はPVもとても素敵で、TRIPLANEの中では個人的に最も好きなPVかもしれない。4thアルバム「リバーシブル」のアートワークも担当している。

人の気持ちなんて/気まぐれで不安定で/捉えようも無いこと/誰だって知ってる/でも 信じたい 信じたい/ずっと 信じていたい/踏み出した道は間違いじゃない(君ドロップス/TRIPLANE)

M-8.白い花
マチュアバンド時代から人気が高かったと言われている楽曲。音源化されるのを心待ちにしていて、結果、TRIPLANEが勝負をかけた壮大なバラードとして仕上がった。これまでのTRIPLANEの人気の高い既出楽曲バラードと言えば「いつものように」とか「Dear friends」と言ったバンドを全面に押し出したバラードであったが、今回の「白い花」は決してバンドを活かすことばかりを考えたものではなく、楽曲としてどのようなアレンジが最適か?楽曲が最も生きるアレンジとは何か?を試行した末のものであるように思える。編曲はスピッツにも関わったことで知られる笹路正徳さん。この辺りからTRIPLANEは「美メロバンド」と言われるようになり、ちょっとずつ方向性がズレはじめたかな?と個人的には思った(商法も含め)。
コブクロ「桜」もそうだが、アマチュア時代から温めてきた楽曲と言うものは思い入れが強すぎるのだろうか、どうにも力が入り過ぎた楽曲に聞こえてしまう。よく言えば重厚なサウンドだけれど、一方では軽々しく聴けない。「モノローグ」が“伝えようなんて大それてない”楽曲だとすれば、「白い花」は“独り言であっても大それた”楽曲のようにも思えたり。

M-9.あの雲を探して
2ndシングルにして、このクオリティを生み出す、というのはとてつもない能力を秘めていたバンドだったように思う。このクオリティを保ったまま加速している瞬間に、どうしてレコード会社は、事務所はもっと有効なプッシュが出来なかったのかいちリスナーとしてとても悔やまれる。
肝心の楽曲も、「スピードスター」の勢いに乗ったままバンドとしての力を存分に発揮して、疾走感あふれる仕上がりとなっている。いま聴いても新鮮味が残っている“熟していない実”を味わっているような気分だ。TRIPLANEの疾走感あふれるポップスの原型はきっとまさにこんな形。

思えばいつも/手にした答えと引き換えに/探していた場所を/見失ってきたんだろう/木枯らしの吹くこの坂道で/また君に背を向けて歩く(あの雲を探して/TRIPLANE)

M-10.イチバンボシ
アルバム「V」の前身として同タイトルのミニアルバムが発売された。とにかくライブ含め、現在進行形のTRIPLANEの看板を背負っていた楽曲。
力強く、そしてメッセージ性も強く、スピード感もあり、リズムも心地よい。とにかく完成させれている。
北海道サッポロビールのCMタイアップの曲で、アップテンポで、力強く爽やかなアコギのストロークから始まって、4つ打ちのリズムで脈拍高まる。
悲しい気持ちも、前に向きたい気持ちも、すべてを払拭して世の中なんて見方次第じゃん!というメッセージをすごく上手く伝えてくれている。
メロディーセンスと、アレンジセンス、どれも素晴らしい。

歓喜せよ/満足の行かない暮らしにも/一切を逆手に取ってやれ/暗黒に浮かぶ/希望のイチバンボシを信じて(イチバンボシ/TRIPLANE)

M-11.友よ
スッと入ってくるようになれば曲自体は気持ちが良いので何度も聴いてしまう。
とにかくメロディーが素直な曲。けれど、彼ら独特のメロディーセンスやアレンジセンスが表れているかと言えばそうでもない気がする。
どちらかというと、世間に溢れているJ-POPを彼らなりに少し調理し、作り上げた楽曲と言える。
しかし、メロディーが素直な分、心の中に歌詞がうまく流れてきて、琴線に触れる瞬間がたまにある。

M-12.夏が終われば
TRIPLANEは季節感のある楽曲が多い。シングル曲であれば「冬のアスタリスク」はタイトルそのものに季節が入っているし、アルバム曲でも「秋」が入っているものもある。歌いだしが「春」のものもある。
そんな彼らを代表する夏ソングのひとつ?が「夏が終われば」だろうか。とにかく、アレンジからなにから“夏”を想起させるものをつくろう、という意気込みがあったのかなと感じ取れる仕上がりになっている。
歌の内容そのものは、アップテンポではなくミディアムバラードで心の距離が離れてしまった男女のセンチメンタルな心情を綴っている。個人的には「妙なプライドで〜」のくだりがとても好き。

妙なプライドで/積み上げたマウンドから/投げるだけの想い/受け止めてくれてる君は壊れそうなのに(夏が終われば/TRIPLANE)

M-13.Reset
倦怠期の歌をこれだけポップに仕上げた、というだけでも凄いと思う。それも3rdシングルにこの曲を持ってくる姿勢もTRIPLANEというバンドは独特の切り口で闘っているという気持ちが窺える。
なによりイントロのギターのリフがとてもキャッチーで、TRIPLANEの魅力が存分に発揮されている。これから先のシングルでもそうなのだが、TRIPLANEにはとにかくキャッチーなイントロが多い。特にギターのリフは格好のいい、弾きたくなるようなリフが多くて好き。今回のベスト盤にいざ楽曲を並べてみると、いい意味でそういう偏りがないが、個人的なキャッチーで恰好いいTRIPLANEギターイントロおすすめは「アイコトバ」「つれづれのマイナーナイナー」「Reset」「raspberry」「Darling」あたり。ほぼ1stと5thアルバムからになってしまった。
疾走感の中で倦怠期を打破し“もう一度やり直そう”と試みる楽曲の主人公の素直な心情の描かれ方が魅力的な一曲。

M-14.雪のアスタリスク
TRIPLANEの中でも極上のバラードに入る部類であると思う。
「友よ」とは違い、北海道出身の彼らの個性がたっぷりと詰め込まれている。
それは歌詞であったり、曲の雰囲気であったり、この楽曲は「冬」の世界観で染められている。
たぶん、とても「身内」的な楽曲で、身近な誰かから誰かへの向けたラブソング。
その相手をより思えば思う程、楽曲そのものの深みも増していくのではないかと思う。

M-15.いつものように
個人的にTRIPLANEで最も好きな楽曲であるし、この楽曲があるから未だにTRIPLANEが好きであると言っても過言ではない。ラストがこの楽曲で締められる意味、とは。
とにかく素晴らしい、の一言に尽きる。誰かを思う気持ちと、その上手く伝えられない気持ちと後悔や不安というのが短いセンテンスの中に必要最低限の言葉で綴られている。ピアノからバンドサウンドへ、と変化するアレンジもベタではあるが、それを上回るバンドの力強さ、青臭さが感情の昂ぶりを表現して、尚且つボーカル江畑氏の熱量がスピーカーからグッと伝わってくる。
次の世界がどんな世界であろうとも、とにかく僕らはドアを開け続ける他ない。その向こう側にある新しいなにかを求めて。そして、そのドアを開ける理由が、誰かを思う気持ちであればあるほど、なんとか自分を震え上がらせる、自分を支える出来事であると歌う。
どのフレーズも好きなんだけど、実は「鞄の中は〜」と歌われるCメロが好きだったりする。鞄の中はからっぽなのに、不安や悩みが入れば、潰されてしまう、という独特の比喩が好き。
彼らもまたこの楽曲の主人公の様に、次への扉を常に開き続けていくことを一ファンとして応援していたい。

鞄の中は/いつも空っぽだから/悩みとか苦しみなんかで潰されるよ/いつものように/ドアを開くよ/この世界が全てじゃないと言うように/次の世界が何か知らないが/その笑顔は決して絶やさない(いつものように/TRIPLANE)

SINGLES  04-12 (初回生産限定) (ALBUM+DVD)

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