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高校入試最終回の感想[ネタバレなし]×青い春/back number

▼生きていく上でのひとつの分岐点、高校入試
日本で生きている僕らにとって“高校入試”とは、人生のひとつの分岐点、ともいえるライフイベントだ。
大学入試のほうが自身の進路に関わることだから一見大事なことの様にも思えるけれど、捉えようによっては高校入試の方が重要だったりする。
それは、入った高校によって勉強のレベルやスピード、もっと下衆なことを言えばそこでできる友人にも大きな違いが出来るからだ。

高校入試を失敗する、という事が問題なのではなく、なにか目的に向かって勉強をしない、という事が後の人生に大きな影響を与える。

その「影響力の大きさ」をメッセージのひとつとして含んでいたのが今回の「高校入試」。
田舎では「公立至上主義」というものが未だに根付いていたりするように、入った大学よりも、入った高校、だったりする。
その風習を模倣しながらドラマの登場人物たちは高校入試に振り回されていく。

最終回の犯人の動機は、正直納得いかない点も多々あったけれど、世の中に問題提起をする、という点ではとてもいいドラマだった。
視聴者も次の展開が常に気になっていたし、犯人を推理するのは楽しかった。
そして、それぞれの登場人物の背景までしっかり描かれていて、人の心、というものを疎かにしていない点も好きだった。

唯一、高校入試という制度の罪深さを訴えるには説得させるための材料というか、理由というか、そういうものが足りなかったような気もする。

▼ドラマ主題歌「青い春/back number」
高校入試のドラマ主題歌であったback numberの青い春もとてもマッチしていてよかった。
いつだったかのテレビ朝日系のドラマ「警部補 矢部謙三」主題歌であった小林太郎「美紗子ちゃん」のような夜にピッタリな楽曲だった。
back numberにしてはキツい切り口の、決して甘くない風刺的な楽曲であったし。

青い春

青い春

エレキギタークリーントーンアルペジオから始まる「青い春」はタイトルから想像するような決して温かい楽曲ではない。
マイナー調のイントロが不穏な空気を醸し出し現在への不満を、溜息をつくように気怠く歌う。
ドラムのダンスビートだけが淡々と胸の奥へ流れ込んできて、楽曲の緊迫感を作り上げる。

教えられたものだけじゃ いまいち完成しないんだ(青い春/back number)

緊迫する空気はサビ直前のブレイクで一気に弾け、バンドはリスナーをステージへと一気に誘い込む。
自分自身が踊らされているのを分かっている、と認知しながらも“それでも”踊り続ける楽曲の主人公。
それはリスナー自身のことでもあるかもしれないし、back numberそのもののことなのかもしれない。

このドラマと照らし合わせるのならば、「高校入試」というライフイベントそのものは誰かが用意したものだ。
人生には、習慣であったり、儀式であったり、どうしても避けられない道筋、というものがある。
そこから逸脱してしまえば、基本的には、再スタートするのは、より能力や体力が必要とされたりする。

勿論、僕らだって望んで「高校入試」という道を選び進んでいるのだけれど、それは誰かに“踊らされている”感覚、錯覚に似ているのかもしれない。
でも仮に僕らが誰かの用意したレールの上で、ステージの上で踊らされているとしても、“光に包まれるその日々を”“その中で願っている”のだろう。

いい意味で、決して崩れたりしないアンサブルや世界観が、少しだけ冷めた楽曲の世界観をうまく表現していると思う。
踊らされているとしても、決して物語をそのものを壊したりする気はないのだということを。
単調にも聞こえるベースとダンスビートは、その表れなのかもしれない。

後半に向かって掻き鳴らされるエレキギターと疾走するベースが一層感情を掻き立てる。

また踊りながら/必死で生きているんだ/答え行きの船なんて/どこにもなくて/でも逃げないで踊ってるのさ/正しいリズムじゃないけど(青い春/back number)

▼登場人物たちの行く末が、このドラマの伝えたかったこと
人はいつでも再起動できる、ということも、このドラマが伝えたかったことのひとつなのではないかな。

そして春山先生が言っていたように「私たちは矛盾していると思うシステムのなかで、なんだかんだで守られている」ということ。


それにしても最後の教員たちがのんびりと入学式の準備をしているシーン。
なにか裏がある様な終わり方にも思えてしまう(笑)
実は裏の裏で、手をひいていたのは、あの中の・・・。

そうでなかったら、あんなシーン作る必要もなかったんじゃないかなーって思ってしまう。
そういう「真犯人の裏側」みたいなのがあるとすれば、その辺りを探るのもこのドラマの面白い所だし。
ああいう含みを持たせたところも、ミステリーとして好きな部分。

▼過去
登場人物たちのほとんどが、過去に捕われて生きていた。
ある人は自分の中に押し込み、ある人は別の方法で消化しようと試み、ある人は真相を突き止めようと執着し。
それでも納得のいかなかった過去と対話し、それぞれの答えを出してきた。

ライフイベント、というのは、そういう“過去”がとても重要に出てくる場面で、やり方によってはより悪化し、一方では精算されたりするのだろう。
「高校入試」とは、ひとつの過去と向き合うイベントなのだ、というのもひとつのメッセージだったのかな。

そして、自分自身の過去と対話した時に、どんな答えを出せるか、そして、いつだって再起動できるんだよ、リスタートが可能なんだよ、という湊かなえさんの思いが伝わってきた。

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