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バンドとしてのあらゆる時代を余すことなく鳴らした傑作 / Album:REFLECTION(Mr.Children)全曲レビュー

 未来へ続く扉“REFLECTION”

 いつも、Mr.Childrenの新しい曲を聴くときは、胸が高鳴る。そして、その高鳴った胸を鎮める様に、スピーカーの向こう側から溢れてくる鮮やかな音色はスーッと心を浄化していく。昨日までのアレもコレも、ついさっきまでのモヤモヤも、明確な答えはなくとも、心を真っ新な状態に戻してくれる。その景色で、もう一度、“Starting Over(≒再出発)”を示してくれる。
 こんなことを言うのは今更かもしれないが、「Mr.Childrenはこうあるべきである」という理想の姿は、おそらくもう存在しない。それほどにMr.Childrenは国民的モンスターバンドとして肥大し、さまざまなJ-POPの形を世に提示してきた。デビュー作「KIND OF LOVE」のように甘酸っぱい青春の形を切り取った音楽や、ある時は「深海」のような、それまでのミスチルの歴史を塗り替えた一枚、そして「Q」のようなポップバンドに甘んじないバンドとしての可能性を示したり、「HOME」のような揺るがない信頼をあらためて築いたり、とその時代ごとにリスナーを増やし、“Mr.Children像”とはもはやどこかひとつに定まっている明瞭なものではなく、まさにファンとMr.Childrenとの間で“REFLECTION”し続けているものだ。
 本作「REFLECTION」はMr.Children史上初の23曲入りUSBアルバムである。コアファン層向けの{Naked}、ライト層向けの{Drip}の2形態で発売されている。はじまりは、誰も知らない未発表曲ばかりでセットリストが組まれた前代未聞の21周年記念ファンクラブ会員限定ツアーだった。そのツアーを皮切りに『足音〜Be Strong』が月9主題歌としてタイアップが発表されたり、ツアーの模様を撮影したドキュメンタリー映画が公開されたり、未発表曲をテレビで初披露したり、長い沈黙を破り音楽誌のインタビューを受けるなどMr.Childrenが大きなプロジェクトと共に動き出す予感をファンは察知するようになった。やがてスタジアムツアーが発表され、ほどなくしてツアー最終日にニューアルバム「REFLECTION」が発売されることが発表された。
 「REFLECTION」は凄まじい。桜井氏が冗談で「遺作」と呟いたのも頷けてしまう程に、最高傑作だ。Mr.Childrenでオススメのアルバムを聴かれたら、これからは「深海」でも「シフクノオト」でも「SENSE」でも、はたまたベストアルバムでもなく、この「REFLECTION」を勧めるだろう。“Mr.Childrenというバンド”を表現するありとあらゆる夢が、希望が、皮肉が、嘘が、そして覆い隠すことのできない煌めきが「REFLECTION」には詰まっている。過去へ向けて、現在へ向けて、未来へ向けて、リスナーが聴く、想像する多様な光が放たれている。
 僕らは、こんな時代に産まれ、育ち、生き、また新たな一歩を踏み出す瞬間に巡り合うことができて素直に幸せだと感じられる。その新たな一歩が、誰の一歩であれ、大小の歯車となり、どこかで噛みあいながら、軋みあいながら関わっているのだろう。Mr.Childrenのニューアルバムはいまかいまかと待ち続けた2年強を溢れんばかりに満たした「REFLECTION」。これから何年、何十年と、何度も何度も聴くのだろう。そして、僕は、その先に待ち構える新たなMr.Childrenが描く放物線の先へ、扉の向こう側に射す光を共に見届け、常識という壁を越え、何度だって未来へ続く扉をノックするファンの一人でありたいと思う。

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最高傑作[MR.CHILDREN:REFLECTION]

REFLECTION{Drip}初回盤

REFLECTION{Drip}初回盤

  • アーティスト:Mr.Children
  • 発売日: 2015/06/04
  • メディア: CD

M-1.fantasy

 なにかが始まる予感を、突き抜けるようなイントロのギターリフが表現している。幻想という世界に入り込むための『Pink~奇妙な夢』のような妖しげなイントロでも、魔法にかけるような『エソラ』や『Marshmarrow day』のような煌めき溢れるイントロでもなく、充分に歪んだ音で現実と夢の狭間を旅する5分間へと誘うのだ。いままでにあったようでなかった、Mr.Childrenの形。『擬態』とはまた違った『名もなき詩』ポジションの名曲だ。少ない言葉で、時代を写しだし、風刺し、僕らが生きていくにあたって必要なイメージを疾走感あふれるアレンジで描き出していく。
 本アルバムで随所に感じているのは、メンバーそれぞれの表現性がグンとアップしていることだ。雑誌のインタビューでも桜井氏は「小林(武史)さんが抜けることによって、少なくとも欠ける部分があった。それを埋めるわけではなく、どう表現していくかが課題にもなった」と語るとおり、fantasyでは田原氏のギターが空間を覆うように優しい歪みと、適度な太さのサウンドで包み込み、ナカケーのベースが下地を強く支える。そして、JENのドラムのハイハットがいつも以上に効いている。メンバーそれぞれが調和するべく方向へ個性を活かしながら奏でている。ああ、これは「I♥Uツアー」の『未来』みたいだな、と感じた。
 この『fantasy』ひとつで、アルバムを買う価値はあったな、と納得させられてしまうぐらいの“至高のポップス”として仕上がっている。この時代を映し出す鏡の様な曲の向こう側に見える、もうひとつの世界。そこにあるファンタジーは決しておとぎ話ではなく、あくまで日常の延長線上に存在している。聴いた人を、強く勇気づけるわけでもなく、励ますわけでもない、主張の強い曲ではないが、確実に日常の見方を変える、いきるエナジーを与える素晴らしきメッセージ・ソングだ。

ゴミ箱に投げ捨てたファンタジーをもう一度拾い上げたら/各駅停車をジェットコースターにトランスフォームして/[不可能]のない旅へ(fantasy/Mr.Children)

M-2.FIGHT CLUB

 “疾走POP”と仮タイトルがついていた様に『fantasy』以上に疾走感溢れるロックナンバーだ。映画「REFLECTION」で見た時、その格好よさに痺れた。正直“ミスチル、まだまだこんなことがやれるのか”と感じてしまった程に、メロディーもサウンドも青臭く、田原氏の劇的に格好良いギターリフとミュートをかけたストロークで物語はハードに展開していく。歌詞の内容に青臭さを感じれど、大人になった青年が“あの頃”を振り返るストーリーとなっており、“大人になった今だからこそ語れる青さ”が表現されている。ブラッド・ピット主演の映画「FIGHT CLUB」がそのまま題材となっており、映画やドラマの主題歌としても非常に栄えそうな位、ロックでありながらも非常にキャッチーで疾走感に満ちている。
 青年期に誰もが味わう“見えない敵(≒仮想的)”と闘いながら孤独を振り払い、やがては自分自身の中にある空虚を認めながら成長していくという体験。ある意味では『ランニングハイ』のようで、『ランニングハイ』以上に振り切っている楽曲だ。“俺たちはもう特別じゃない”と綴られるフレーズが、諦めでもなく、悟りでもなく、それ以上に受け入れることが難しい、真の敵と闘う為の“覚悟”であることを知る。
 ギターに注目されがちになりそうだが、ナカケーのベースがとてもユニークで、そこに絡み合うJENのいつもとちょっと違ったドラミングが“なにかとの闘い”を連想させて、聴く者を高揚させる。

死を覚悟するほど/まして殺されるほど/俺たちはもう特別じゃない(FIGHT CLUB/Mr.Children)

M-3.斜陽

 「さらばシベリア鉄道/太田裕美」に似てるよね、というのは置いといて。この楽曲が、未発表の楽曲にも関わらず2014年末のフジテレビFNS歌謡祭で披露された楽曲である。その時は、なぜこの楽曲を選んだのだろう?と思ったのだけれど、ファンクラブツアーのセットリストを見ながら考えると、消去法的には『斜陽』が適切だったのかな、とも思う。僕は『未完』のがよかったのでは、と思いつつも。
 詞の世界観や、楽曲の哀愁を帯びた渋さから感じるのは「シングルのカップリングっぽさ」である。悪い意味ではなく、ここ数年はデジタル配信でリリースされることも少なくないMr.Childrenだからこそ、こういう立ち位置の曲を聴く“シングルCDを買うワクワクさ”みたいなものがなくなってしまったなあ、と。『箒星』の煌びやかさから一転したジャージーな『my sweet heart』を聴いた時の「ああ、このミスチルも好きだなあ」というシングルならではの満たされ方というか。
 だからこそ、このアルバムにもそういう立ち位置を目指して作られた楽曲が必要なのでは?と思うし(実際の制作秘話は知りませんが)、こういうMr.Childrenを聴きたい人ってコアな層にはたくさんいるんじゃないかと思う。

M-4.Melody

 そういった“『斜陽』はカップリングっぽい”という個人的主観を挟んだ前段の流れを汲んでの、シングル『足音〜Be Strong』のカップリング『Melody』。ここ最近のミスチルって個人的にはカップリングもやたら煌びやかで豪華で、この『Melody』も例外ではなく。おそらく制作の仕方が1曲1曲丁寧にアルバムを作ることに向けて作られているからじゃないかと思うのだけど(そしてどれをシングルとしてきるかを考える)、この『Melody』は年末の疲れを癒すのにもってこいの素晴らしいポップバラードだった。
 桜井氏の特徴であるハイトーンボイスを可能な限り控え目にし、ミディアムボイスで滑らかに歌われるメロディーと、クリスマスの装飾のように煌びやかなブラスとストリングスが目の前の何気ない風景をカラフルに色付ける。
 ワクワクするようなメロディーを、これほどまでに意図的に作り上げることのできるのは桜井和寿というシンガーソングライターの才能だと痛烈に感じる一曲。そして、この煌めきは「HOME」あたりから歌声や表情にも表れはじめて、“幸せを巻き込む能力”みたいなものが、こういった楽曲にはあるんじゃないかと、時々僕は思うのです。

見飽きたこの街が/クリスマスみたいに光る/そんな瞬間/今日も僕は探してる/苛立ちの毎日/行き詰まった暮らしを/洗うような煌めくハーモニー(Melody/Mr.Children)

M-5.蜘蛛の糸

 ファンクラブライブで披露された時は、とてもシンプルで、スッキリしている曲だ、というのが第一印象だった。しかし、音源をヘッドフォンで聴くとその世界観は綿密に構築されていて、『CANDY』よりも大人寄りで、『隔たり』よりもより妖しげで艶めかしく、『旅人』の言葉を借りるなら“恋に身を投げるロミオ”の心情が美しい比喩で描き出されている。所謂“大人のラブソング”であり、男目線で描かれつつも、女性も聴けばうっとりするようなピアノとストリングスのバラード。
 しかし、弦楽器アレンジにとどまることなく、バンドもがっつりと入ってくる。定番になることはないだろうなと思いつつも、桜井氏の作家性が非常にあらわれた詞とメロディーはファンの心をとらえ、一定数いるファン層にとっての「待っていた」感あふれる楽曲なんだろうなと感じる。こういったラブソングがあるのは、Mr.Childrenのオリジナリティというよりは、Mr.Childrenの振り幅を広げていることに繋がっているのだろう。

M-6.I Can Make It

 アンニュイでフォーキーなロックソング(フォーキーなのかロックなのか、という)。決してキャッチーなメロディーではないけれど、同じメロディーの繰り返しに留まらないひとつひとつのサビがとても素晴らしい。
 誰かの背中を押している励まし系の歌でもあるようで、『FIGHT CLUB』のような“ありもしないもの”に可能性を感じている人々を遠回しに皮肉っているような歌にも思える。だって、この曲の主人公、遠い夢を見すぎて、なにひとつ目の前のことを肯定し切れてない気がするしね。なにより、楽曲全体に漂うアンニュイなパフォーマンスがそれを暗に示唆している。
 ただしそれは、『fantasy』でも綴られていたように、それが皮肉であれ、嘘であれ、それを希望と信じ込んで前に向いていく強さを僕らは持っていて、この「REFLECTION」というアルバムに閉じ込められた楽曲のすべては、『fantasy』という幻想に集約されてしまうのではないかと思える。
 この楽曲も例に漏れず中川氏のベースと田原氏のギターが世界観構築に一役も二役も買っている。中央に響き渡るベースと、不安定なアコースティックギターストロークが印象的なAメロの“バスタブ〜”から、ドラムが入り込んで来れば、そこに歪んだエレキが参戦し、ミュート気味のカッティングによって出口のない迷路へと誘う。サビに入るまでのRから鳴るエレキのチョーキングも素晴らしい。どことなく楽曲のアレンジ具合は『声』を感じさせる。

明け方/非現実的な夢を/バスタブに浮かべてみる/身体は疲れてるのに目は冴える/やるべきことは沢山(I Can Make It/Mr.Children)

M-7.ROLLIN' ROLLING〜一見は百聞に如かず

 アルバムで初解禁された楽曲。この流れではこの楽曲が初。
 時期で例えるなら「DISCOVERY」期のミスチルにあたるようなロック&ブラスアレンジソング。『アンダーシャツ』のようにシャウト気味の桜井氏のボーカルとエレキのリフが印象的な楽曲。田原氏のギターが炸裂、というわけではないけれど、「BOLERO」の時によくあったなーと感じる“ロック+ブラス”のアレンジに加わる歪んだリフが際立ってライブ栄えする様が目に浮かぶ。特にCメロ〜間奏部分の裏で鳴らされるブラスなんかは、『タイムマシーンに乗って』を連想させる。
 個人的にはアルバム曲という印象がとても強く、というのも、詞がどうにもうこうにもうまくまとまらないままオチに向かってしまっているような気がしている。詞の世界観に寄り過ぎず、楽曲のアレンジ、世界観で勝負をしてきている、そのまとまってなさは「BOLERO」や「DISCOVERY」期を確かに思い起こさせるな、と。(この文章もまとまっていない)

M-8.放たれる

 映画「青天の霹靂」主題歌。初聴の感想は、『祈り〜涙の軌道』っぽいな、であった。しかし、何度か聴くうちに音楽的にとても実験的なことをやっているのだと気付いた。閉じ込めていた光がそっと放たれていくイメージを抱かせる、『祈り〜涙の軌道』とは明らかに違う、J-POPという次元から抜け出したまるで聖歌の様な音楽。そこにバンドが控え気味になることなく調和していて、アルバム「シフクノオト」の後リリースされた『sign』のような、ある種「[(an imitation)blood orange]」の延長線上にあるような楽曲に感じる。

あきらめかけたいくつかの/夢/希望/憧れ/幸せ/朝顔が空に伸びるみたいに/その光をたぐり寄せる(放たれる/Mr.Chidren)

M-9.街の風景

 この楽曲については『パノラマの街』で感じたことを下記で詳細に記しているので参照頂ければと。
 パノラマの街/小田和正・桜井和寿(Mr.Children) - 今日もご無事で。
 『街の風景』を聴き終わった後に感じたのは、「え!?これアレンジ違くない苦笑?」というのが率直なところ。詞がめちゃくちゃ素晴らしいので、辛うじて保っているけれど、サイモン&ガーファンクルっぽさを目指しているようで、がっつり歪んだギターが入ってきて、世界観を壊しているわけではないんだけれど、アレンジがマッチしていない、それが“若さ”の表現なのか?とリスナーを混乱させてしまう気がする。
 個人的には“鼻につく”ではなく“欠点になる”のがよかったなー。

M-10.運命

 「初期のミスターチルドレン」を彷彿とさせる、と言ってしまうのは安直だとは知りつつも、『運命』はそれぐらいに軽快なポップスであり、青臭い歌詞だ。桜井節全開の爽やかで、男臭い(そして女々しい)韻の踏み方は、読みどころ。シンセとギターの絡み合いが絶妙で、そこにライブでも盛り上がるであろう手拍子が入っている。
 「初期のミスターチルドレン」なんて言ってしまったけれど、こういった楽曲は近年でも『I'm talking about lovin'』など、おそらく桜井氏が意識して作っているものであり、年月をかけて不定期ではあるが、産み落とさずにはいられないエネルギーのひとつなのだろうな、と思っている。ただ、『運命』が特別なのが、これまでの曲とは違い“10代ならでは”の心の揺らぎや青さが楽曲に託されている点じゃないかな、と個人的に思います。10代の頃に聴きたかったなー。

M-11.足音〜Be Strong

 フジテレビ系 月9ドラマ『信長協奏曲』主題歌として『祈り〜涙の軌道/End of the day/pieces』より2年7ヶ月ぶりにリリースされた本作『足音〜Be Strong』は、Mr.Childrenにとって35枚目のシングルとなる。
 長期レコーディングの中、タイアップが決定し“新しいMr.Children”を世に示す代表曲のひとつとして放たれた『足音〜Be Strong』はスタッフとバンドの間で何度も「その“新しいMr.Children”の“新しい”とは何か?」を試行錯誤した結果誕生したものだと度々インタビューでも語っている。
 特に「楽曲の露出が尤も多くなるであろうCMで予告が流れることを意識して作った」「サビの部分だけを切り取った時に、ストーリーを内包できる広さを持ったもの」といった桜井氏のコメントからは、かつてポカリスウェットのCMで流れる15秒でどれだけキャッチーなサビを流せるかを意識し作られた『イノセントワールド』の制作エピソードを思い起こさせる。
 そんなエピソードの通り、本作は過去のMr.Childrenの楽曲の中でも屈指のロックバラードとなっており、リスナーの背中を後押しするような力強いサビとバンドサウンドが魅力となっている。
 ファンクラブツアーでいち早く先行公開された『足音〜Be Strong』は、SNS上でも様々なコメントが寄せられたが、もし今、過去の楽曲に例えるなら『Everything (It's you)』と『終わりなき旅』を掛け合わせたような強さと言えるだろうか。
 決して出だしから気負うようなサウンドではなく、エレキギターと静かなリフと、一歩ずつ踏み出していく様なリズム隊と景色を浮かび上がらせるような滑らかなストリングスで、Aメロ〜Bメロへと情景が綴られる。むしろ、どこか寂しさや切なさを思わせる様なメロディで、独り言のようなAメロの歌詞が刹那を匂わせる。
 そこから“夢見てた未来はそれほど離れちゃいない”と綴られるサビは、ストレートなメッセージながらも、掻き鳴らされるバンドの熱気とあいまれば、この時代に生きる人々が素直に前を向きたくなるような強くポジティブな力を持つ、まるで『終わりなき旅』のようなポジティブでありながらも、射程範囲の広い、不思議な楽曲だ。

M-12.忘れ得ぬ人

 ONE DIRECTIONを意識して書いたというこの曲。イントロのピアノが美しいのもそうなんだけど、ヴォーカルのリバーブがとにかく素晴らしい。サビにはいる直前でストリングスが入ってきて、一旦ブレイクする。まさに“歌を聴かせる曲”なんだけど、「いままでMr.Children」にこういう曲があったかな?っていうと思い当たらなくて、その新鮮さは未だに鮮度を落とさない。「隔たり」や「安らげる場所」とはまた違うバラード曲。

M-13.You make me happy

 イントロのブラスが高揚感と懐かしさを引き連れてくる。これもまたボーカルのコーラス具合が面白くて、最近のミスチルっぽくもあるし、昔のミスチルっぽさもある。まさに楽曲のテーマともリンクするようなアレンジ。こういったジャジーな楽曲はいままでのMr.Childrenにも何度かあったけど、その度に進化していて、ブラスのアレンジなんかは、いままでよりもより前に出ているように感じている。間奏で口笛が入ってくるあたりなんかも洒落ていて、「演奏していたら楽しいだろうなー」と感じる楽曲。どことなく「split the difference」で行われたblue motionでのライブの余韻を感じる。

M-14.Jewelry

 こちらもまたブラスが活かされつつ『you make me happy』よりもよりアダルトなトーンに仕上がっている。より歌謡曲風にアレンジを寄せながら、歌詞の世界観も情緒的。『Jewelry』は『you make me happy』の感想で遊び心的に入っていた口笛とは違い、間奏では正統派に洒落乙なピアノが散りばめられている。L-Rで掛け合うように、絡み合うように演奏されるアコースティックギターとピアノとの音が心地よくて、最小のアレンジでも楽曲の魅力は十二分に伝えられるのではないかと思いました。

M-15.REM

 このアルバムの中で、リスナーがはじめて耳にした楽曲。まるで「DISCOVERY」期の『#2601』のようなハードロックなサウンド。不穏なSEとギターのアルペジオからはじまり、太く歪んだエレキのミュートがかったストローク。暗い闇の向こう側から、姿も見えないなにかが叫ぶような複雑なメロディーと決して暴れすぎることのない地に足のついたドラムとベース。奇を衒っているのではなく、挑戦をしてきているような気がした。この『REM』がリリースされた2013年、ミスチルサマソニに出演し、『ニシエヒガシエ』『フェイク』『REM』を演奏し、「ミスチルなら馴染みのあの曲たちでセトリを組んでくるだろう」という期待を良い意味で裏切ってきた。意図的に振り幅を産みだすべく、シングルレベルまで技術をあげた楽曲を造ろうと『REM』が完成したんじゃないかと思う。
 詞の世界観は、過去のMr.Childrenの中でも類を見ないほど個性的。断片的な思考をノートにメモした言葉そのまま詞に落とし込んだかのような、完成しないパズルのピースを渡されたような感覚だ。個人的にはこれ、小林武史氏にもっとアレンジして欲しいと思っていまして、ライブでは『ニシエヒガシエ』や『フェイク』のように化けたら面白いなあと秘かに思っているのです。
 それとアルバムの中でも数少ないMVが作られている楽曲でして、めっちゃ不気味です。これはなんなの笑?

M-16.WALTZ

 『REM』に引き続き激しめでダークな1曲。Mr.Childrenって歌詞が素晴らしいのも魅力のひとつだと思っているんだけど、正直最初にこの曲の歌詞を見たときは「えーーーMr.Childrenらしくないな……」と感じました。わりかしストレートに表現されているし、比喩表現も特別珍しいものじゃないし……と。けれど、聴けば聴くほどこの楽曲の魅力に引き込まれて、ライブではもう虜になっていた。
 この楽曲の魅力の世界観を作っているのはまさにボーカリスト桜井和寿の歌い方であると思う。この23曲の中で、その楽曲それぞれの歌い分けができている。声色が違う。その歌声に潜む「やりきれない感情」が、聴き手の心まで届いて、歌詞の世界観に没入していく。
 Cメロでは怪しげなハープシコードと共に、「諦め」を「亡霊」に例えて、歌い上げる。「Mr.Childrenでいままでこんなに過激な言葉を使ったことあるっけ?」っていう表現がでてきて、驚かされると同時にそれだけの不満や不安、苦悩がこの楽曲の主人公に存在していることを知らされる。
 

M-17.進化論

 未レビュー。優しい。

M-18.幻聴

 未レビュー。希望の歌。

M-19.Reflection

 未レビュー。予感。

M-20.遠くへと

 未レビュー。泣ける。

M-21.I wanna be there

 未レビュー。イカしてる。

M-22.Starting Over

 未レビュー。ラスボス。

M-23.未完

 未レビュー。てなわけで、続く。