今日もご無事で。

今日も無事なら明日も無事でいて。そんなくだらない話。

夜に静かな独り言

 6畳間。テレビの音楽番組で鬼束ちひろが「月光」を歌っている。“I am GOD'S CHILD [私は神の子供] この腐敗した世界に堕とされた”と綴られた言葉、いつ聴いてもいいなー。でも現実感ねーな。この小さい枠組みの向こう側、録画された歌がRGBで写されてんの?ところで、この歌って500年後も価値あるものとして生きてるかな?そりゃ、ないな。Beatlesだって歌い継がれているかどうかでしょ。いや、こんな阿呆らしいことが言いたいんじゃない。
 どうしても現実感がない。腐敗した世界だかなんだか知らないが、それを俯瞰して見ている自分がいる。録画された鬼束ちひろが写るテレビを6畳間の部屋で見ている自分がいる世界。それってつまり僕が、この世界に夢中になれていないってことじゃなかろうか。テレビの鬼束ちひろに感情移入できていない。こんなに名曲なのに。オザケンフジロックでんのかよやべーよやべーよって俺も騒ぎたい。
 以前、その作品が名作かどうかを感じ取れるのは、その時のコンディションも大きく関係していると書いたことがある。極端に言えば、失恋したタイミングで大好きなアーティストが失恋ソングを出したら、その人にとってその曲の価値は何倍にもデフォルメされてしまうだろう。性格にもよるけど。そう考えると、当たり前だが、この世界だって自分とのコンディションの兼ね合いである。
 そんな状況下でさあ、選べ、選べってさあ。選べるわけがないじゃん。いつだって手放せないものばかりだよ。もう目の前にきたらどんどん膨れ上がるばかりだよ。ずっと持ってたいよ。待ってくださいよ。持ってと待ってってどうしてこんなに漢字が似てるんですか。持つは手偏で、待つは行人偏なんですか、ええ、そうですか。
 例えば「就職しよう」「結婚しよう」「子供を育てよう」って言われてもね、もうそれ博打なんですよ。安定的な未来なんて、どこにも保証されていないし、「あなたとならどんな未来も乗り越えて行けるわ」ってそれどんな愛情保証ですか。愛ってそんなにすごいんですか。そんなにすごいのに、なぜ大抵の愛は犠牲の言い訳に使われるんですか。
 じゃあ、「結婚したい」って思うときってどんなときってもうそれは打算的な考えですよ。いやらしく、貧相な心の持ち主。いますぐ撃ち抜け。抉り出せ。捧げ。
 そういう想像力のない癖に過信して生きているやつが嫌い。俺はすごいんだぞって思ってないのに、心の底で「俺ってなにかできるかも?」って思ってるやつが嫌い。僅かな希望に縋っている奴が嫌い。絶望の底で叩きのめされろ。もうすぐそこに見えてるんだ奈落の底は。奈落の底見えたらやばいっすね。見えるってことは光が届いてるってことっすよね?それやばくない?奈落の底浅くない?底が見えないから奈落の底なんじゃない?
 ここまでだいぶ妄想なんですけど。精神は正常です。正常なんだけど、最近漠然とした不安が募りすぎて、書かずにはいられない。なんていうか綺麗に生きすぎている。もっと人間関係とか、社会とか、世界とか、ギスギスしているべきでしょ?みんなほんとにそんなに綺麗に生きてるの?信じられないんだけど……。
 批判とか、綺麗すぎるんだよ。肯定すんのは下手すぎる癖に、ものごとの悪口が普通すぎるの。それ、ちょっと改変したらすべらない話で、笑いに変えられちゃうやつじゃん。笑いに変えられないジョーク言ってよ。あ、もうジョークじゃないか。つーか、そんなこと話しても生産的じゃないしね。「で、話したところでなにか解決するわけ?」って言われそうだな、当事者に。
 だったら黙っていて欲しい。ずっと黙っていてほしい。自分の無能さに気付いて、棚に上げている自分をすべて引き下げて床に敷いて販売してほしい。まずはそこからでしょ。そこからはじめるべきでしょ。なに自分、もっと価値あるものとして考えてるんですか?
 どうしたらいいのかわからないっていうより、もう漠然とした不安だよね。然るべき選択肢は、出尽くしたよ。可能性も有り余っている。例えば、ドラえもんにだって会える気がしているけれど、それはちょっと違う。僕が欲しいものはドラえもんではないし、四次元ポケットでもない。仮にもしもボックスがあったとしても、なにかを唱える気は更々ない。どうしてかって、もう漠然としているから、未来が。絵空事すら書けないわけですよ。え?ドラえもんに会えるっていう絵空事が?すぐそこに?書かれてる?
 ちょっと前までは答えを出してくれる人を求めてた。答えは自分でしか出せないことがわかっていても、答えが欲しかった。でもどうやらそうではないみたいだ。
 いまはもう漠然としていて五里霧中。ちょっと前なら、答えのない問いに頭を悩ませていて「こりゃあ、暗中模索だわ」とか思ってたんだけど、本当の闇はここでしたね。なんも見えねえ。なんのせいでなんも見えねえのかもわからねえ。ただただ漠然とした不安がそこら中に広がっていて正体もつかめない。どうなったら最高とか、どうなったら最低とかもわからん。もう自分がない。
 冷静に考えたら疲れているだけな気もしてきた。寝るか。