Album:non no/TRIPLANE[レビュー・感想]
TRIPLANE3年ぶりとなる通算6枚目のフルアルバム。
錚々たる面々がTRIPLANE - ホーム | Facebookにてコメントを寄せている以上、私もコメントを寄せなくてはと筆を走らせている次第です。
……というわけでもなく、単純にTRIPLANEが大好きで感想を書かずにはいられないので、いま記事を書いております。
待ちに待っておりましたフルアルバム。
リリース、おめでとうございます。
『追随を許さない新世代ポップ&ロックの形』
ALBUM:non no/TRIPLANE
- アーティスト: TRIPLANE
- 出版社/メーカー: tearbridge
- 発売日: 2015/02/25
- メディア: CD
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前作「Design」ではハイテンポ&ハイギミックなバンドとしてのグルーブを見せつけたTRIPLANEが、今作では原点「home」に立ち返る様な「ポップ」と「ロック」を「non no」に集約させた。
発展途上の「リバーシブル」、デジタル&ポップの集大成「V」、そこに“プロのバンド”としての最高のグルーブを産みだした「Design」、いったい次のアルバムはどう攻めてくるんだろう?と考えていたところに、この「non no」だ。
「Design」のような形態では何れ限界が来ることを、アルバムとしてまとまりのある形が、バンドとして“軸を持たせる”ことが非常に難しいことを、おそらくTRIPLANE、彼ら自身が感じていたのだろう。「non no」はメンバーそれぞれの役割がひきたち、その巧みなギミックでリスナーを魅了しながらも、単純なスピード感や、技術で攻めまくるだけでなく、ある意味では最低限の構成で楽曲を仕上げている。
言ってしまえば、「リバーシブル」からはじまった「デジタル×POP」といった体制を取っ払い、「ポップバンド」「ロックバンド」としてもう一度舞台に立ったのだ。
彼らにとって失礼な喩えであることを承知で云うけれど、「脱ミスチル」を目指して「リバーシブル」からの流れを作っていたように個人的には思っていて、そこを吹っ切って今回の音像(レイアウト)で勝負にでたということは、もはや「ポストミスチル」に立ち返ったといっても過言ではないと思っている。
「ミスチルっぽい」ということを撥ね除ける為の練られたサウンドが、もはや彼らの音を出していくだけで、「ミスチルっぽいけど……でも明らかにミスチルとは全く違う」という『追随を許さない新生代ポップ&ロックの形』を彼らは産み出した。
>作家的で叙情的な世界観
今作で称賛したいのは、そのバンドとしてのグルーブだけではなくボーカル江畑氏の綴る詞の遊びと風刺だ。
正直な話、世界観としては「V」が好きなのだけれど、比較できる程に世界観が違っているという点で「non no」も素晴らしい。
今回の「non no」は詞の世界観が明らかに外に向かっていて、『アングル』でも連ねられているように“現状から、視点を変えよう”というメッセージが随所に鏤められている。
それは『イチバンボシ』にも込められていた江畑氏のポジティブなメッセージが、ここにきてすべての楽曲に活きているように思う。
「V」が“個人的なリリック”で埋まっていたとすれば、「non no」は“作家的なリリック”で埋まっていると思う。一定の人にだけ共感を投げかける様な言葉ではなく、大衆に受け入れられるような「ポップ」を目指した歌詞になっている。
ほら/人民の/人民による/人民の為の国は何処だ/一般市民の/我ら凡人の/暮らしを何処へ運んでくんだ
(ゲルニカ/TRIPLANE)
畳み掛けるような、バンドサウンドと一体化したメロディーは、何度も何度も聴くことで僕らの心に沁み込んでくる。ある時、ハッとさせられる。でも、煩くない。気付くべき未来を、彼らは示してくれている。
そして、このアルバムで最も注目すべきなのが『HUTCH』という楽曲だろう。常に、実験的な楽曲をアルバム内で配置してきた彼らだが、『HUTCH』では強烈なアレンジとダウナーなメロディー&リリックで、調和していないような錯覚に陥る複雑なテンポでリスナーの現実に迫ってくる。
教育された/僕ら変態は/働き快楽を得て/想像の域は超えないが/きっと/終身刑/なのに僕らは「いつしか きっと」って祈りをヤメない/可能性なんてのは/不渡りになるのが相場
(HUTCH/TRIPLANE)
この部分のフレーズがとにかく好きです。。。
>さておきコラボ、そこに見る“らしさ”
そして、ささいなコラボも見逃せない。一発目でガツンとグルーブを打ちだしリスナーを唸らせ、痺らせた『羽根』。もう、とにかく、なんでもいいからこの楽曲聴いて欲しい(切実)。いろんなバンドが、いろんな手法でチャートをあっちいったりこっちいったりと、脚光浴びたりなんだりで世間騒がせたり、小さなライブハウスであーだこーだ本当は俺たちすごいと言いながらファンと傷の舐めあいしたり、プロでもないのに実力があると名乗ったり、もうとにかくポップやロックをプロで名乗る人には聴いて欲しい。
この純粋にも立ち向かい、飛び立とうとする『羽根』を。
煽る様なヘンな前置きが長くなってしまいましたが、『羽根』は、とにかく素晴らしい楽曲で、「non no」というアルバムをある意味では象徴しているんじゃないかと思っています。
そして、注目すべきは作曲がギターの川村氏との共作になっていること。この共作が、唯一無二のTRIPLANEらしさを産みだす最高のグルーブに繋がっているのかもしれません。
他といえば、「Jelly」のド・ポップさも最高です。「TRIPLANEが爆発的にヒットしない理由はド・ポップな曲で勝負し切れないとこなんだよなあ」と思っていたところに「Jelly」です。大変申し訳ありませんでした。
「TRIPLANEのバラードって、いつも重くて聴くのが大変なんだよなあ」と思っていたら、「柊」も「ノンノ(作詞にて小路幸也氏と共作)」も聴きやすくて非常に驚いています。ヘビロテします。
そして、逃せないのが「EZO」。これが「non no」を名盤たらしめる理由の楽曲になっているのではないでしょうか。壮大なのに、飽きさせない展開。バンドとしての進化が伺える至極の展開です。一聴あれ。
そういうわけで、僕もいつかコメント載せたいです。よろしくお願いします。
というのはさておき、このアルバムの欠点は、歌詞カードの歌詞の文字が小さすぎることですね。最初は格好いいな、とか思ってたのですが、やはりここまで小さいと噛みしめながら読むことが困難です。
名盤「non no」、新しいJ-POPに痺れてみたい方、是非聴いてみてください。