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REFLECTION/Mr.Children:感想&レビュー

足音は常に鳴らされ続けている
 Mr.Childrenは進化を止めない。「深海」で社会からの光すら当たらない闇の奥深くに潜り込み、「HOME」で手の届くすぐそばの世界を鮮やかに彩り、最新作「 [(an imitation) blood orange]」では理屈抜きのHAPPYを綴った。その足を止めることはなく、ベテランのミュージシャンの中では活動スパンはファンを退屈させることのない非常にコンスタントなものだ。今回発表された6月発売予定のアルバム『REFLECTION』をのぞけば、ほぼ2年おきにアルバムを発売しており、傾向はあるものの、バラエティに富んだ曲群でリスナーを魅了してきた。
 ここ最近の彼らの活動スタンスとして“できるかぎりインタビューには応じず、製作者の意図や思いといった情報を介せず、音楽を聴いたそのままの感触を愉しんで欲しい”というものがあった。「HOME」あたりからその“音を楽しんでほしい”という桜井和寿の思いは表れていて、“(例えば歌に関して)うまくとれたテイクよりも、すこしずれているが最初のテイクを採用する”場合もあることが多くなったという。インタビューに関しては、「SENSE」からほぼ応じなくなり、昨年12月「Rolling Stone(R)」誌を期に各誌へのインタビューをオープンにした。とはいえ、「Lucky Raccoon」なんかはたまに出てたけどね。
 おそらく最新シングル「足音〜Be Strong」がMr.Childrenとしてのセルフプロデュース作品であり、イコール脱プロデューサー小林武史宣言であることへの決意表明も含まれているのかもしれない。よくもわるくも、小林武史の手腕あってこそのMr.Childrenであった部分から、いちど離れてMr.Childrenとしての、バンドとしてのプロデュース能力の技量をこれからは試していくこととなる。ある意味では伏線として、実験的にウカスカジーの「春の歌」で行われていた(ウカスカジーなので、プロデューサーとしては桜井和寿のみ)。ちなみにこの「春の歌」、FM802版が作品としてめちゃくちゃ好きです。イントロのスライドのギターとか、ストリングスとか、映像も。好き。
 
沈黙を破った先に見据えるもの
 では、彼らがこの長い沈黙を破った先に見据えているものはなんなのか。どうやら「小林武史のいないMr.Childrenを見せます」ということだけではないようだ。「足音〜Be Strong」が月9ドラマ「信長協奏曲」のタイアップソングとして華々しく世に産み落とされたこともきっと彼らの戦略のひとつで、「これからの音楽業界に、もう一度Mr.Childrenで一石を投じたい」といったようなことを発言しているのだ。これはめちゃくちゃ期待している。
 いままでは「Mr.Childrenがバンドとしてここまで成功できたのはある意味で奇跡と奇跡の掛け合わせであり、いまMr.Childrenが世の中に登場しても同じようには成功しないと思う」みたいなことをよく言っていたのに対し、「Mr.Childrenでもう一度音楽シーンを取り戻せたら」という発言が彼らにとって非常にハードルの高い宣言であることは間違いない。むしろそれを自覚して尚、音楽業界に旋風を巻き起こすのであれば、それは良い意味でも、悪い意味でも、ビジネス的であり、戦略的であり、“良質な音楽”という武器だけで闘っていけるわけじゃないことを知ってのことだと思う。
 それを如実に表していると思えるのが、「ファンクラブ限定ツアー(未発表曲ばかり披露)」→「シングル」→「映画」→「全国ツアー」「ツアー最終日 アルバム発売」といった桜井氏曰く“いつも通りのやり方ではない新しいやり方”である。
 もちろん最終的には「音楽を聴いて欲しい」という想いが込められているのに違いはないが、それ以上に「Mr.Children」というバンドとしてのブランド力を世に訴えかけていく実験だと思う。
  鉄は熱いうちに打て、ではないけれど、新曲のストックを大量に用意しておいて、それを導火線に火を付け次々と打ち上げる花火のように虎視眈々と年単位のプランを立てているのだろうな、と当たり前だけど思う。それはMr.Childrenという名前が飽きる程、世に出る様な。考え過ぎかな?
 にしても年末のFNS歌謡祭で未発表の「斜陽」歌っちゃうのは攻めすぎだよね!

「REFLECTIOИ」観てきました。
 そんなこんなで、Mr.Childrenの3作目の映画、『REFLECTION』観てきました。エンジンがプロデュースしてますね。今回の映画。「es」「split the difference」と比べてライブ観が非常に強い映画だったと思う。というか、ほぼライブ。僕は、ファンクラブ限定ライブツアー行けなかったので、新曲群が聴けて嬉しかったです。

 個人的な感想としては、やはり僕は初聴はアルバムを買って、ヘッドホンで歌詞カードを観ながら聴くのが好きだな、ということ。ゆっくりじっくり噛みしめて味わいたい、というのが気持ちなので映画やライブで初めて聴くと、意図通りなのかもしれないけど、音に流されてしまう。ああ、じっくり聞きたいのに、音に楽しませられているなあ、という感じでした。
 各所で評判が抜群にいい「幻聴」は本当に素晴らしかった。Mr.Childrenらしさがでていると思うし、「擬態」や「蘇生」よりも非常に歌詞やメロディーがキャッチーだと思う。「擬態」の方がスルメ度は高いし、とにかく僕は「擬態」信者なので贔屓してしまうけど、それを含んでも「幻聴」は十二分に素晴らしい。
 
「幻聴」について
 「蘇生」や「擬態」とはまた違った、自己肯定ソングであるし、ちょっと毒や刹那も含んでいて、ネタバレをすると「幻聴を聴いて主人公は勇気付けられている。むしろ、いま抱えているものはすべて幻かもしれないけれど、それを信じることで叶う可能性もあることを知っている」といった最後のオチはもしかしたら悲しみや絶望かもね、でもそれまでは希望を持って生きるべきなんだという、自己の内面にとにかく向き合った歌。
 僕の中で「擬態」は他者と自己、外の世界と自己といった「目に見えるもの、目に見えないもの」を“いかに信じて生きていけるか?”“いかに自分のものとして取り込んで生きていけるか?”といった歌だったのだけれど、「幻聴」はそれよりもっと自己に向き合って「外の世界にあるものすべてが仮に幻だとしても、問題はない」といった、なんていうかな、「ストレンジカメレオン」で歌われていた様な(あれは作者はthe pillowsだけどね)、“例え世界はデタラメで/種も仕掛けもあって/いつかなついていた猫はお腹すかしていただけで/すぐにパチンと音がして弾けてしまう幻でも/手の平がまだあたたかい(ストレンジカメレオン)”に通ずるところがあると思う。
 それはMr.Childrenというバンドが“なにかの幻聴”に求められるようにここまで来て、果たして、この長い道のりになんの意味があったのかを未だに見出すことはできないけれどもまだその“幻聴”、もしかしたらそれは確かじゃないファンの声かもしれないけれど、走り続けるよ、というメッセージなのかもしれない。

感想的雑記
 あと個人的に非常に好きだったのは「I Can Make It」「FIGHT CLUB」「幻聴」「未完」でしょうか。「進化論」はすごく気になっていて、「幻聴」同様ハードルがとても上がっていたのだけれど、ちょっとあっさりしすぎていたかな?というか、歌詞を読みたいなという段階です。どんなに進歩しても、自然には脅かされてしまう、といったニュアンスの部分はもう少しちゃんと聴きたいと思いました。「FIGHT CLUB」は田原氏のギターのリフがめちゃくちゃかっこよくて、「ニシエヒガシエ」以来にかっこいいイントロのリフだなって思いました(笑)ブラッドオレンジは、ギターリフ少なかったからなあ〜。
 「未完」はとにかく最高の一言に尽きます。“未来へと続く扉/相変わらず僕はノックし続ける(未完)”というのは、「終わりなき旅」のことを指していて、まだ彼らは閉ざされたドアの向こう側を探しているんだな、という決意表明を感じて痺れました。それがロックバラードじゃなく、アップテンポなロックソングというところがまた痺れる。音楽家としての探求心をここまで表しているバンドって、なかなかいないんじゃないかなって、ぐらいに本当に素晴らしい。好きだ。「Worlds end」の時に似た様な衝動を感じています。
 次のアルバムは作家としてのMr.Childrenにとことん向き合ったと言われている「IT'S A WONDERFUL WORLD」みたいなアルバムになるじゃないかな、と思っています。もちろん、曲のバラエティはロックからポップまで非常に振り幅のあるものだと思うんですけど、ある意味では非衝動的というか、2年半の年月はそれだけのものだった、と。
 とても楽しみです。ずっと応援してます。

http://www.mr-reflection.jp/

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