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Album:V(TRIPLANE)全曲(再)レビュー※10/3加筆修正

一度レビューしてみたのだけれど、ひどかったので、もう一度しっかりと大幅に書き直してみた(よくなったと信じたい)。
だらだらとした前書きは、最後に配置。
彼らにとって5枚目にして最高傑作のアルバム、至高のポップス快進撃、「V」

V

V

M-1:パノラマセカイ

本作をラジオ等のメディアで紹介する際に率先してかかっていたのがこの曲。リード曲と考えてもいいかも。
癖になるようなギターリフから始まり、ボイスエフェクトのかかったAメロが飛び込んでくる、そのエフェクトの緩め方も聞いていて心地が良い。
エフェクトやアレンジで楽曲そのものに漂う倦怠感を表しており、サビに向かって世界観が広がっていく。
ベース、ギター、ドラムがしっかりと立っているバンド感も溢れる一曲。
このアルバムのこれからを、序章をイメージさせる。

まるで時間が止まったみたいな/白い世界このパノラマを/君に見せたい/君にあげたい(パノラマセカイ/TRIPLANE)

M-2:イチバンボシ

このアルバムの前身として同タイトルのミニアルバムが発売された。とにかくライブ含め、現在進行形のTRIPLANEの看板を背負っていた楽曲。
力強く、そしてメッセージ性も強く、スピード感もあり、リズムも心地よい。とにかく完成させれている。
北海道サッポロビールのCMタイアップの曲で、アップテンポで、力強く爽やかなアコギのストロークから始まって、4つ打ちのリズムで脈拍高まる。
悲しい気持ちも、前に向きたい気持ちも、すべてを払拭して世の中なんて見方次第じゃん!というメッセージをすごく上手く伝えてくれている。
メロディーセンスと、アレンジセンス、どれも素晴らしい。

安息の茶番劇など欲しくはない(イチバンボシ/TRIPLANE)

M-3:Darling

このアルバムの中では、人気が高いんだろうな、と思う。
アウトロの“Darling”と連呼するコーラスがすごく心地よいし、そうでなくともAメロの譜割りとかTRIPLANEのメロディーの乗せ方が素敵だなあ、と。
そして尚且つ、中身の詰まったリリックで訴えかけてくる。
「友よ」にしても「Darling」にしても内容やコード進行はベタなんだけど、そういうベタなやり方にものすごく合った声が彼らの強み。

M-4:Greendays

イントロがツボにハマってしまう。ランダム再生でイントロを聴いてしまったら、なかなか飛ばせない。
楽曲そのものの世界観も、どこかループを続けている様な彼らの楽曲の中では実験的な部類に入るかと。
値打ちのなくなった自分でも、例え価値がなくとも、どこかで失ってしまった『自分』を探し続けていく。
本作は「ヨワキモノタチ」や「優しい嘘」が主役だとすれば、この「Greendays」はミニアルバム「イチバンボシ」の主役級楽曲。
充分にクオリティは高く、歌っている側も、聴いている側も、どこか胸を抉られる様な「なぜ、自分はここにいるのか?」という痛烈な問いを、「ループ」という恐怖で再現している。
サビで楽曲の空気感がパッと開けるところも心地よい。

過剰に背負ったプライドに/見切り値の赤いステッカーを/ぶら下げたまんまの僕だって構わない(Greendays/TRIPLANE)

M-5:麦色

失恋の歌に聴いて取れる。
1stアルバムの頃を思い出させる楽曲。彼らが素晴らしいのは、こういう「失恋系統」の楽曲をアップテンポに仕上げ、メロディーを刹那的に配置することだ。
そして、ギターやベース、ドラムの中で際立つピアノの音色が素晴らしい。しかし「蕾」や「君ドロップス」のようにストリングスに頼り過ぎることなく、あくまで「バンド志向」で勝負をしている。
変な話、これが“TRIPLANEの真骨頂”であると思う。しかし、こういうポップスとしてのバンド感の強い楽曲で勝負できないのが、今の音楽界。

M-6:書き置き

この曲から後半までの流れが最高の出来栄えで停止を押せない。
書き置きは周波数のズレたラジオから流れてくる歌のようなノイズ含んだローファイな曲。
最後のフレーズが「〜です調」じゃなくなってちょっとしっくりこないんだけど、すごくいい。
曲自体は2分と長いのにすぐに世界観に引き込まれ、感傷的にさせられれます。
すごい。

M-7:ヨワキモノタチ

ボーカルの江畑さん曰くこのアルバムの主役らしい。僕からすると、このアルバムの影の主役である。
「addiction(single白い花のカップリング)」にも似たメッセージ性があるようにも思う。
受け入れるべきでない事実を身体中に塗りたくって、それでも現実から逃れられない本能を僕らは背負ってしまっている。
掻き鳴らされるアコースティックギターが十分な迫力を持って、僕らに責め立てる「忘れたい思い出だって/何食わぬ顔をして/背中を抉って刻んで/幸せを訴えるんだ」というフレーズは中毒になる。
救いがないわけじゃない、でも闘わないわけにはない、適当なラブソング聴いて満たされて快感に溺れているわけじゃない。
その快感に痛みを含んだ辛辣な楽曲。

忘れたい思い出だって/何食わぬ顔をして/背中を抉って刻んで/幸せを訴えるんだ(ヨワキモノタチ/TRIPLANE)

M-8:優しい嘘

タイトルはシンプルで、どんな楽曲かも予想はつかないけれど、「ヨワキモノタチ」以上にダークな楽曲。
この楽曲があるかないかで「ヨワキモノタチ」やアルバムそのものの印象は大きく変わっただろうと言える。
展開が目まぐるしく変わっていき歌詞も次第に攻撃的に、そして内向的な部分から外へと向かっていき、最終的にはまた内側に帰着する。
音楽に対してのラブソングのようにも思える。どれだけ音楽を愛しているか、そしてどれだけ憎んでいるか。愛と憎しみは表裏一体と訴えかける。

M-9:つれづれのマイナーナイナー

イントロのギターのリフが痺れるほど恰好がいい楽曲。そして綴られるリリックも刺激的で風刺的で、挑戦的だ。
そして、優しい嘘の流れがあってものすごく活きる曲。アルバムの構成も意識されている所が、またこの楽曲、アルバムともにクオリティの高さ、アーティストとしての能力の高さを示している。
Aメロ、Bメロ、サビという単純な構成ではなく、緩急の付け方も独特で最後のサビへ向けて盛り上げていくスピード感。
ラストのサビでは、現在のJ-POPを風刺しているようにも聴いてとれる。しかし、彼らも同じ舞台にいる事には違いはなくて、そのバランスが素晴らしい。
というのも、その後に「友よ」っていうまさに“フォーマット”みたいな曲を差し込んであるのが彼らの格好よさ。

でも「会いたかった 会いたかった」ってフォーマットみたいなんだもん/冷めた/今が正念場って/アンタ誰だ?/地団駄踏んで/ムダに歌うんだ(つれづれのマイナーナイナー/TRIPLANE)

M-10:友よ

スッと入ってくるようになれば曲自体は気持ちが良いので何度も聴いてしまう。
とにかくメロディーが素直な曲。けれど、前曲「つれづれのマイナーナイナー」で歌われているような正に「フォーマットみたいな」楽曲であって、彼ら独特のメロディーセンスやアレンジセンスが表れているかと言えばそうでもない気がする。
どちらかというと、世間に溢れているJ-POPを彼らなりに少し調理し、作り上げた楽曲と言える。
しかし、メロディーが素直な分、心の中に歌詞がうまく流れてきて、琴線に触れる瞬間がたまにある。

M-11:-mori-

名曲。
イントロのギターの穏やかなアルペジオが静かな雰囲気を連想させる。このアルペジオとボーカルの重なり方が素晴らしい。
出だしの「君は知っているのかな」という歌詞で世界観が一瞬で出来上がる。
「永遠なんてない」というテーマのもと、歌われる世界観は、「ヨワキモノタチ」にも通ずる刹那で、目の前にある風景がそのまま舞台設定になる。
とても透明感のある楽曲で、歌っていることはとても“苦しい”ことであり“苦い事実”であるのだけれど、それを受け入れた人間の情緒が綴られている。

M-12:雪のアスタリスク

TRIPLANEの中でも極上のバラードに入る部類であると思う。
「友よ」とは違い、北海道出身の彼らの個性がたっぷりと詰め込まれている。
それは歌詞であったり、曲の雰囲気であったり、この楽曲は「冬」の世界観で染められている。
たぶん、とても「身内」的な楽曲で、身近な誰かから誰かへの向けたラブソング。
その相手をより思えば思う程、楽曲そのものの深みもマイしていくのではないかと思う。

M-13:Hello

ストリングスが上手に使われたイントロで世界観が出来上がる、TRIPLANE新しい一面の見れる楽曲。
本作の楽曲はどれもクオリティが高い。そうなると、13曲目となったら、もうこの辺りでお腹一杯になってくる。
この楽曲は、良い意味で「余韻」を感じさせる楽曲だ。
例えば、夕暮れに僕らは“聴き流しながら”この楽曲を聞く。しかし、そういう「余韻」にも容易に色をつけてくれる楽曲なのだ。
ひとつひとつの楽器の音を拾っていくと、どれも滑らかで、泣きそうなメロディーを辿っている。

M-14:六畳リビング

「いつものように」という曲が1stに収録されているんだけれど、あの曲よりもっと視点がローカルになった感じ。
ささやかでつつましい暮らし。でも、でもね、と徐々に聴いている側に真実が伝えられていく楽曲。
歌い方、感情の込め方がすごくグッと響き「仕事になっちゃったよ」からのフレーズが聴き手を泣かせてくる。
アンプラグドなんかでライブをやっても、十分に栄えるんじゃないかという楽曲で、ストリングスも目立ちすぎることなく楽曲を支えている。
明らかに「内輪」でローカル、身近な楽曲なんだけれど、誰にでもきっと響くであろう世界観が綴られている。

僕にとっていったい君の価値とはなんだろう?/考えてみてもこれといってなくて/告げたら「ひどい」って言って笑ってた(六畳リビング/TRIPLANE)

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書き捨てられた前書き

進化したPOPだ。
挑戦的で、前衛的で、実験的だ。

北海道出身のバンドTRIPLANEの最新の5thアルバム“V(ブイ)”は、彼らにとって2年振りのオリジナルアルバム。

軽く今までのアルバムを振り返ると。
1stは自己紹介のようなアルバム。バンドとしての強さが物凄く出ているし、これからに向けての意気込みなんかもすごい感じられる。迷いがない。
今でもよく聴くし、どの曲もとにかくバンドとしての「甘酸っぱさ」とか「はかなさ」「葛藤」もうとにかく美味しい所たくさんありで、これから第一線で活躍してもおかしくない様な出来だった。

2nd、3rdでは明らかな“売れ線”を狙って作られていた雰囲気が正直あった。
これは音楽の話じゃないんだけど。
「夏が終われば」というシングルがあって特典が「ライブDVD」と書かれていてすごいワクワクして買ったら映像だけライブ映像で音源はCD音源っていうもうがっかりのなんのっていうかもうDVD付き買わないと決めた。

この辺りがTRIPLANEの言う所のV字グラフの底、だとすれば4thは上昇気流に乗り始めた所でしょう。

4thはいままでにない今回のアルバムのように実験的な曲が多くて、挑戦的だった。
ただ、歌詞もアレンジもどこか昇華しきれていなくて、僕は満足だったけれど、TRIPLANEが好きじゃない人からしてみれば素通りしてしまうような感じだったのかもしれない。
それで、2nd3rdでハマった人たちからすれば「ピアノバラード少なくない?しかも、なんかよく分からない歌詞多いし」って感じで離れた人もいるかもしれない。

そして、今回の5thアルバム“V”。

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とにかく、最高のポップ。

ヒットする要素は腐る程持っているし、このアルバム程、挑戦的で実験的な音楽をプロ意識を持って制作しているバンドが他にあるか?ってぐらい素晴らしいバンドだと思わされた。
4thの実験的なデジタルサウンドもすごい上手く昇華できている。
なんとなくだけど、アルバム全体の雰囲気は桑田佳祐MUSICMAN(通常盤)のカラフルさを感じた。

本作“V”でのお気に入りは、「優しい嘘」「-mori-」「つれづれのマイナーナイナー」です。

そして個人的には、次のシングル、もしくはアルバムは「いつものように」や「僕らの街」「ライナーノート」「addiction」みたいな声を枯らして歌う一曲が聴いてみたい!