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おやすみプンプン10巻/浅野いにお[ネタバレ]

※5/10加筆修正

いちごオレを飲んでいたら疲れも取れてきたので適当に書く。

おやすみプンプン9巻を読んで、8巻の時に書いた考察・感想が全く見当はずれのもので「うわー」と思ったのだけれど、10巻を読んだらあながち間違っていなかった気もしてきた。
特に南条幸を置いて、愛子ちゃんとタクシーに乗る10巻最後のシーンとか。

愛子ちゃんに縛られることでしか生きていけない。

おやすみプンプン 10 (ヤングサンデーコミックス)

おやすみプンプン 10 (ヤングサンデーコミックス)

▼今回のプンプンはあまりウジウジしていない
とりあえず伊達メガネなしの通常版のおやすみプンプン10巻を買った気持ちとしては、すごくライトな内容になったな、と。
ただ浅野いにおさんはインタビューでも以下のように語っている。

『プンプン』の連載はもうちょっと続くんですけど、ホントに取り返しのつかない、へこむことがるのはこれからの話なので。そこを読んだらね、本気でへこむっていうか、場合によったら誰も読まなくなる。(SWITCH VOL.30 No.2 FEB.2012より一部引用)

なので、その序章としての軽さなのかな、と。

▼素直に感情を吐き出す登場人物たち
いままでのプンプンは愛子ちゃんに会えないことで思考回路がぐるぐるぐるぐるしていて、煮えたぎらなくて、イライラさせられて、はあ?と頭の中で呟きながら全く共感がでいないまま、もやもやさせられて終わる内容が多かった。

しかし、今回は愛子ちゃんに会えたこと、そして、藤川たかしを演じることで客観的なプンプンの怒りや疑問がストレートに言葉になって発せられているから共感しやすい。
というのも藤川たかしを演じるプンプンが読者目線になってくれているから「はあ?」って思う部分でしっかり「はあ?」と表現されている。
「ふざけんなよ」と思う部分で「ふざけんなよ」と、「なんか違う」という部分で「なんか違う」と言ってくれている。

愛子ちゃんも同様、病んでいることには変わりないんだけれど、それを遺憾なく発揮し、言葉にし、怒りにし、ぶち込んでる。

とにかく今まで説明されずに消化不良であった主人公たちの内面(葛藤や苦悩)が、言葉や行動に素直に表現され、衝突し合い、吐き出し合う場面が多いのは、読んでいる側もすっきりするし、今までのモヤモヤをうまく消化できそうな展開だ。

唯一わからないシーンといえば愛子ちゃんとプンプンがプンプンの家で最後に突然あれするシーンなんだけれど、そういうわけわかんないスパイスがあるのがプンプンなので気にしない。
それにしても、どうして突然ああなった。

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おやすみプンプン10巻のまとめ
おやすみプンプン10巻は、登場人物それぞれの物語における軸、立ち位置、方向性がはっきり示された巻だと思う。
多分、この後の伏線の回収に向けて進み出す準備なんだろうな、と感じさせられた。

あと、きっとわかりやすかったのは今までの物語と比べて10巻の世界観がものすごく小さい場所にあったからだと思う。
今までが社会や学校、宗教や複数の人間関係だったことに比べ、今回は愛子ちゃんとプンプン、南条幸とプンプン、など小さい所で濃い話が進んでく。
分かりやすい。

ただまあ、なんというか、今更こんなにわかりやすくなっても、いままでの気持ちや成長過程に共感できなかったのでうまく馴染めないというか、心の揺れみたいのも読み取り難いし、プンプンを取り囲む生活に愛情も感じることができないのが(読み方として)物足りないかもしれない・・・。

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以下、追記部
おやすみプンプン」は個人的には“もやもや”を抱えたまま終わるものだと思っているので、物語の方向性とかは特に気にしてもないし、メッセージ性に期待してもないし、じゃあ、なんで読んでるの?って聞かれたら〈良い意味での惰性〉で読んでいるのだけれど、あえて方向性を考えるなら、と思い追記してみました。


▼物語のはじまりがそもそも愛子ちゃんだった
そもそもおやすみプンプンが物語として動き出したのは愛子ちゃんが転校してきてからだ。そこから彼にとって愛子ちゃんという存在が“自身の人生にとってなくてはならないもの”という錯覚を強いられ現在に至るまで酷く拗らせる結果となる。
そう考えると仮にこの物語に終着点があるとすればそれは「愛子ちゃん」という存在とプンプンとの関係になんらかの決着を付けることである。

▼プンプンが愛子ちゃんとの決着を意識しているとするならば
おやすみプンプン10巻においてプンプンは二度愛子ちゃんに襲いかかろうとする。一度目はお互いに別の仮面をつけたままで、二度目はお互いの仮面を剥いだ後。
仮にプンプンが「おやすみプンプン」という物語を俯瞰的に覗き、「愛子ちゃん」と決着を付けることそのものが「物語の終着点」であると恣意的に考えられていたのだとすれば、その交わろうとした行為そのものは彼にとっての「終点」を意味することだったのだろう。

ずっと相手(愛子ちゃん)の手中にいた自分自身を脱し、愛子ちゃんを自身の手中に収める、征服したい、そうすることで自身の物語に決着が付く。そういうことならば。

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