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今日も無事なら明日も無事でいて。そんなくだらない話。

リアルタイム・シンガーソングライターの高橋優が歌うことはちょっとだけ綺麗で、ちょっとだけ汚い

ほんとのきもち

ほんとのきもち

階段の片隅に座りうずくまるあの人に何があったんだろう?
一体何を見て来たんだろう?
(ほんとのきもち/高橋優)

高橋優は「リアルタイム・シンガーソングライター」だ。
その名の通り、高橋優は今(リアル)を書きなぐる。

-高橋優と「福笑い」

僕がそもそも高橋優を知っていたのは、多分、彼の名を世に浸透させるきっかけとなったひとつでもある「東京メトロ」のCMだ。
未発表、未発売の「福笑い」がOAされ、結果として、あのアレンジは「福笑い〜ピアノバージョン」となった。
アレンジすら定まっていなかったのだ。そんな曲が採用され、OAされ、世に知らされ、人々の心をキャッチする、とても面白い。

この曲のサビはとてもキャッチーで「きっとこの世界の共通言語は/英語じゃなくて笑顔だと思う(福笑い/高橋優)」というものである。
このフレーズはラジオのリスナーの言葉がきっかけで誕生し、生まれた。
話が少し逸れるけれど、このはじめて「この世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔だと思うんです」というフレーズがラジオで読み上げられた時の、空気感はとても僕は好きで、なんていうか、とても愛情のあるコピーだと今でも思っている。

-素晴らしき日常の歌っていること

また、高橋優のデビューシングルである「素晴らしき日常」
この曲は三拍子の曲なんだけれど、その3/4の格好良さがとても際立っている。
特に好きなフレーズがある。

そこから覗いてる景色は 天国でも地獄でもない先進途上国
素晴らしき日常/高橋優)

世界は見方によっては天国にも地獄にもなるんだよ。
そういう風に歌っている歌はいくらでもある(実際、最後のサビではこの歌もそう歌う)。

けれど、そうではない。
天国でも地獄でもなくて、そこにあるのは「先進途上国」なのだと。
そこに僕らは感情を付随させて物事を考えているだけであって、君はなにをくよくよしているんだと。
そんな風に、このフレーズを聞く度に思わせられる。

-痛くない共感

ただ、高橋優に共感はするけど、聴いていても痛くない。
いわば、ミスチルみたいなもんで、「優等生な皮肉や批判」なのだ。
なんというかまだ綺麗な部分を歌っているというか。
もっと人のえぐい部分を書きなぐって欲しいな、と思う。
特にデビューしてからは、御利口な歌手イメージが少しずつ貼りつけられてきているような気がしてしょうがない。

でも、そういう「やさしい」部分があるからこそ、ヒットしているのだと思うし、そこが良さだとも思う。
素晴らしき日常でも、他の曲でもそうだけど、「きっと光はどこかに射している」という後ろ向きでは終わらないのが素晴らしい所だ。

しかし、そのままだと「こんなはずじゃない」とリスナーが思い出して、なかなかイメージを壊すことが困難になっていくんじゃないかと思う。
だから、イメージが定着する前に、是非、起承転結も構成もなにもかもめちゃくちゃでいいから、高橋優にしか歌えない、リアルな心境を綴った痛快な歌を聴いてみたい。