芸人交換日記/鈴木おさむ
雑記。
またネタバレあり。
- 作者: 鈴木おさむ
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2011/03/10
- メディア: 単行本
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よくある物語、と言えばそうだった。
だから「泣ける物語」っていう帯は勿体ないなと思った。もっと面白い所がたくさんあったから。
展開の仕方とか、作家さんらしいなと思った。いい意味で売れ線な書き方だ。
この本が訴えたいのは「夢を諦めるということ」なんだろう。
本の中にも「夢を諦めるのは才能だ」というなんとも合理化思考の謳い文句が出てくる。
最後の方で合い方の田中が「お前は、そうやって自分のやってきたことを美談にして死にたいだけだ」みたいな嘘を言うんだけど、これって実際そうじゃない?と僕は思った。
この2人は売れない芸人と言いつつもずっとやりたいことをやり続けてきた。
でも、そうなんだよな。世の中の人のほとんどが好きでやってる仕事じゃねえんだよな。多分。仕事は仕事なんだよ。(芸人交換日記/鈴木おさむ)
甲本はこうやって自身の“売れない芸人生活”がいかに贅沢だったかを振り返る。
いや、本当、贅沢でしょ。
夢を諦めるのが辛いとかさ。
いや、辛いでしょ。
でも、10年間も漫才を、例え売れなくても、やれたって本当に贅沢だよ。
苦しいとか、生活が厳しいとか、悩みが絶えないとか、でも甲本と田中は生活最低限のラインをふらふらしながら生活で来ていたし、精神面で言えば社会人だって同じように悩んで苦しんでいたはず。
その後の2人の生活が散々だった、とかなら、現実的で苦しいけれど。
本当に贅沢な話だったと思う。
とはいえ、「一生この仕事をしたい」と考えている人間が、その志を捨てる事は武士が刀を捨てるようなもんなんでしょう。
正直、計り知れない辛さがあると思うので、なんとも言えない。
ただ、これは「幸せな現実」であって「模範的回答」でもあって決して「こうならないようにしなきゃ」って反面教師にすべきような現実じゃない。
だから、少しamazonのレビューには違和感があるし、「現実って大変なんですね」ってまるで他人事みたいなコメントは理解しがたい。
これは僕らの生活における普遍的な物語だ。