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今日も無事なら明日も無事でいて。そんなくだらない話。

医学と芸術展@森美術館

2年ぐらい前になりますけど行きました。
何度でも見たい、と思わせる美術展でした、ほんと。
これを見てから、興味のある美術展は逃すべきでない、とあれやこれやと思い足を運ぶようになりました。

テーマは医学。
でも、別に医学的な視点を要するわけではなく(勿論知っていたらもっと深い考察ができるのだろうけど)、前置きや知識が要るような作品群ではなかった。

そして、とにかくシンプルだった。
これは逆に医学だからそうなんだろうけど、作品、例えば医療器具がひとつだけポカーンと置いてあったりして。
でも、それだけでも十分なメッセージ性を持ち得る作品で、否が応でも「生命」「生き抜いていくこと」を感じざるを得なかった。

まず、美術展に入って最初のブロックは解剖図がいくつか飾られている。
人体の解剖図、妊婦の解剖図もあったかな?
これは特になにかアーティストが脚色を加えたりとかはせず、そのままで飾られていたと思う。16世紀〜18世紀に描かれたもの。
後にレオナルド・ダ・ヴィンチの解剖図や、二重らせん構造の下書き?なんかも展示されていたりして、ぼくはあまり関心を寄せなかったけれど、見る人が見れば貴重でとても興味をそそるものだったと思う。
特にレオナルド・ダ・ヴィンチに関しては日本で初公開と書かれていたし、やっぱり鏡文字だったし。

次に最も印象に残っている作品があったのだけれど、名前を忘れてしまったので後々調べた。
白宜洛という人の「リサイクル」という作品。現代アート
リアカーにゴミ、リサイクル品が乱雑に積まれている。
そして、その上に大きな心臓の模型。
もう一度、書くと、タイトルはリサイクル。

これですね。
レントゲン、白宜洛 | 「医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る」展示風景 2009/11/28-2010/2/2… | Mori Art Museum | Flickr
もうとにかくメッセージ性云々もそうなんだけど、発想力に圧巻だった。
すごい、と素直に思える迫力。

やがて広いブロックに出る。
デミアン・ハーストの「外科手術(マイア)」という作品は写真じゃないの?と見間違えるぐらいの完成度。
小さいけれど、公式HPに。
MORI ART MUSEUM [医学と芸術展]

この辺りのブロックは人間の生と死について。
かつてのスーパーマン、いわばヒーロが老いてしまって介護が必要になった姿を描いた作品や、ゲームボーイで遊んでいるはずの少年の顔をよく見ると顔がおじいちゃんだったり。
すごい綺麗なドレスだなーと思って解説を読むと、6500個もの経口避妊薬で飾られたウェディングドレスだったり。
皮肉かどうかは正直わからないけど、これも圧倒的メッセージを放っていた。ぼくには正直、重いとこもあった。

ぼくがとにかく印象に残った作品、もうひとつ。
アルヴィン・ザフラの「どこからでもない議論」
作品はそこそこ横に長い全長7mの真っ白なキャンバス。

本当に、真っ白で、これも解説を読むまで、なんだかさっぱり。
実は、これ頭蓋骨を磨り潰して白くしたもの。
人間なんて、結局、物質でしかないんだよ、ほかのなにものでもないんだよ、という。
人は死後、物質に戻る。

あとは、行った人の多くが「これよかった!」と推すのが
ヴァルター・シェルスの「ライフ・ビフォア・デス」
余命を知らされた人(違うかもしれない)の生前の写真と死後の写真がいくつかある。
子供から大人まで。
生前と死後。
生きている顔の写真と、死んでいる顔の写真。

もうとにかく圧倒だったのをいまでも覚えている。
こう、グッと心臓になにか妙な圧力を感じた。
とにかく内容の濃い、そして強い。

この美術展後、ぼくは森達也メメント、を購入する。