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巨神兵東京に現わる@東京都現代美術館

正しくは「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技@東京都現代美術館」に展示されている作品のひとつが「巨神兵 東京に現わる」なのだけれど。主に短編映像の感想を〜。※短編映画については、ネタバレです。

▼特撮のリアル~“手”の見える映像
「館長庵野秀明 特撮博物館@東京都現代美術館」は大雑把に言えば“特撮の紐解きと挑戦”だ。
僕ら憧れのウルトラマンのマスクとか、ミニチュア、試作段階の型、絵コンテやスケッチなど円谷英二氏を始めとした多くの巨匠たちの「技術」を覗くことができる。まさに“手”が見える作品だ。

僕はデジタルだろうが、アナログだろうが、それだけでイエスノーを決めるつもりはないけれど、ここに展示されている作品のどれもが「“手”の見える作品」だった。

まさに「巨神兵、東京に現わる」がそうだ。
「特撮」という表現方法をどこまでも無垢に追求し続け撮影された作品「巨神兵、東京に現わる」
巨神兵も着ぐるみを用いるのではなく、より巨神兵らしさを出すために最大5人掛かりでの操作が行われたもよう。

僕はノスタルジーに浸れるだけの記憶を持っていなかったので、空気とか感覚とかを頼りに観ていたのだけれど、「小さいころ見ていたあれだ!」というのがある人はたくさんあるんだろうな、というミニチュアがたくさんあります。

あとは、「電柱」や「信号機」といったミニチュアがお勧め?されていて、それが僕はすごく共感した。
「電信柱の造形美を見てほしい」と解説には書いてあったのだけれど、僕も一時期信号機に見惚れていたことがあったので。
あの無機質な感じと、それでも「空気」を感じる、時間を感じさせない、痛々しさを感じさせない造形が好きだ。

破壊された国会議事堂や、デパートの模型とか、知っている作品が多ければ多いほど、楽しめる作品があるのではないかな、と思います。

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巨神兵、東京に現わる~誰も世界を壊そうとしないから、神が壊すしかなかった
巨神兵 東京に現わる」はおよそ9分の短編特撮映像作品だ。
風の谷のナウシカ」に登場する巨神兵を新たなアプローチ方法で庵野秀明を中心に描き直し、「火の7日間」の「1日目」すなわち火の7日間がはじまるまでの日常を表現した。
正直な所、どこか「震災(東日本大震災)」のことも頭にあって制作させれたのかな?と思ってしまうような台詞描写は多々あった。

舞台は東京。
東京に一人暮らしをしている姉のもとに弟が訪れる。
弟は「もうじきこの世界は終わる」とだけ告げ、突然消える。
姉はとっさに弟に電話をするが、電話の向こう側に出た弟は東京になど出てきていなかった。
不穏な空気を感じながら、東京上空に浮かぶ巨神兵が現われる。

という物語の流れ。

随所に独白のような“ことば”が鏤められているのだけれど、それがとてもグッと来た。
この台詞を受け止めることができただけでも、この美術展には十分な価値があると感じた。
*1断片的にしか覚えていないのだけれど、印象に残った言葉を少し引用すると。。。

弟が姉に「この世界が終わる」と告げると、そのあとにこう語る。

「災いとかって、突然、なんの予兆もなく訪れたりするものだって思われがちだけど、あるんだよね、どんなものにも“知らせ”みたいなものが」

そして、続けて言う。

「とんでもない力によって世界が終ってしまう、そういう想定外の事態が起きた時に、なにができるかってのが大事なんだよ」

そして、巨神兵が現われるとモノローグが画面に浮かぶ。

「誰もこの世界を壊そうとしないから、神が壊すしかなかった」

街が炎に包まれていく。東京タワーが崩れ落ちる。

そして、どの場面だったか分からないが、以下のような台詞がとても印象的だった。



「恐怖こそが神なのだ」


▼恐怖が僕らに与える未来
この作品における“世界”とは自分の内側の暗喩なんだと感じた。
自らで世界を壊そうとしない限り、その代わりとして“恐怖”が自身を襲う。そうすることでしか世界(内面)は終わらないから。
すべてが壊された時、“自分自身になにができるか?”が新しい創造をする為に課せられるテーマなのではないかと。

だから、僕らは恐怖というものに従順であるべきなのだ。
それは心が、すなわち神が望んでいる未来だから。
その壊され、焼き払われ、なにもなくなった土地に新たな生命を撒く能力こそが生きる意味なのだ。

ちゃんと心の中にある「壊すべきもの」は壊していかなくちゃならない。
そういう「恐怖」と向き合ってこそ、望むべき未来が手に入る。
望むべきっていうか、手を伸ばすべき、かな。

というわけで僕はすぐ「風の谷のナウシカ全7巻セット」をアマゾンでぽちった。

▼特撮展の内容
特撮展は2フロアーに渡って展開されていて、後半はざっくりいうと「特撮の種明かし」がされている。

実際にミニチュア模型の街の中に入って様々な角度から撮影することができるし、どのように合成が行われているか?、巨神兵はどのように撮影されたか?ということが実際に視覚を通して体感できる。
それと、巨神兵の短編の後には、制作チームのドキュメントがあるのだけれど、その映像もとにかく面白い。楽しんで作ってるな、と。まるで若い人たちが和気藹々とやっているような、そんな輝かしいエネルギーを感じるミーティングから撮影の様子など。

最後は特撮展に入館しないと入れないミュージアムショップがある。
ガチャポンがすごい人気だったな、巨神兵の。
空気につられて僕も一度回してしまった。500円。

お金を惜しまずに何度も回していた人たちがオークション目的でないことを祈る(事実、オークションではここでのキャラクターグッズが高値で売られている)。

*1:※注
記憶の断片を頼りに書いているので、台詞は一部か、全くあっていない可能性があります、著者の解釈と妄想で書いています。ご了承ください。