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告白(第二章:殉教者)/湊かなえ

“告白/湊かなえ”は全六章からなる。
今回は、その第二章:殉教者について。
夫々の章が異なった価値観で語られていくから、六章まとめては言えそうもないと思った。

告白

告白

第二章は第一章で自らの愛娘が自身のクラスの生徒によって殺されたという事をクラスに告白したのを最後に辞職した担任の教師の生徒、美月のモノローグ染みた先生宛ての手紙についてから始まる。
そして、その内容は告白を受けた生徒たちがその後どのように変わっていったか?というもの。

殺人をした生徒の名前を教師は口にはしなかったものの、また教師自身の考えから公にすらしなかった(いわばクラス内だけの秘密となった)ものの、生徒たちは“誰が殺人を犯したか”検討がついていた。

その様子を美月はこう例えた。

 本題に入る前に、先生は空気を意識しますか?
 澱んでいる、澄んでいる、滞っている、流れている……。空気はその場にいる人たちのオーラの集合体だと思います。それを毎日、息苦しいほど意識してしまうのは、私が上手く集合体になじめていないからでしょうか。とにかく、春だというのに、B組の教室内に漂っていた空気は、一言で表すのなら……。
 異様でした。(告白)

後に、クラスは責め合いのゲームに発展していく。
殺人を犯した者だけでなく、そうでないものまでもがクラスの“異様な空気”に惑わされるかの様に、責任を転嫁し始める。

 ほとんどの人たちは、他人から賞讃されたいという願望を少なからず持っているのではないでしょうか。しかし、良いことや、立派なことをするのは大変です。では、一番簡単な方法は何か。悪い事をした人を責めればいいのです。(告白)

それが一番簡単な方法かは分からないけれど、少し納得した部分があった。
途中“いじめることが快感である”というようなニュアンスの文が出てくるけれど、その“快感さ”とは“間違った正義(間違っているかどうかは定かじゃないけど)”から来るのじゃないかと思う。

可笑しな奴を裁いているのだ、と何処か麻痺してしまった思考回路が脳に訴えるんじゃないかな、と。

すごく極端な言い方になってしまったけれど、物凄く小さい所で、こういう思考は誰の中にも植わっているものだと僕は思う。
認められたい、賞讃されたい、少しでも優位に立ちたい、そういう願望から誰かを卑下し、相手を悪者とさせ、自身を正義とする。
一番最初に声を上げ、糾弾するのが怖いのなら、誰かに続いて糾弾すればいいのだ、そう美月は語る。

なんだかこう、いつの時代もきっとそうなんだけど、現在のノンフィクションの現実の状況ににてるな、と思いながら第二章を読み終えた。