チャットモンチー BEST~2005-2011~ (Album)レビュー
ドラム高橋久美子の突然の脱退を機に二人体制へと移ったチャットモンチー。
本作は、彼女たちが“三人だった時のチャットモンチー”を収めたベスト盤である。
全シングル、そして各アルバムからのリード曲が収められている。
チャットモンチー BEST~2005-2011~(初回生産限定盤)(DVD付)
- アーティスト: チャットモンチー
- 出版社/メーカー: KRE
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: CD
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勿論、仲が悪いからバンドが解散するのではない事は百も承知であるが、チャットモンチーというバンドがこんなにも早く新体制になるとは考えていなかった。
しかし、“三人のチャットモンチー”が残した軌跡はとても情熱に溢れていて、感情的で胸を打つ曲ばかりだ。
チャットモンチーの高橋久美子は、とても感情的なドラムを叩く。
まるで、ギターのコードを弾いているように、それぞれの音色が違うのだ。
同じスネアを叩いてもギターコードのCの時とDの時がある(チューニングがあってないという意味ではなく)。感情表現が豊かだ。
もっとふざけて言えば、彼女のドラムは“単音”じゃない。“和音”なのだ。
ベスト盤に収録されている曲であれば、“シャングリラ”の力強いキックで訴えるイントロや“Last Love Letter”の決してパターン化しない変化のあるドラミング、“ヒラヒラヒラク秘密ノ扉”のスタンダードな中に隠されたハイハットの繊細な表現など。
本作にはライナーノーツも収録されている。
このライナーノーツもとても愛情に溢れていて、どのライターさんが書いた文章も心揺さぶられる(特にBase Ball Bear 小出祐介氏のはじんわりきた)。
これだけの為に買う価値あると思ったほど。
チャットモンチーの作曲は基本的にボーカル橋本絵莉子が手掛ける。
作詞は、三人それぞれが手掛け、誰の書く詞もとても表現豊かで、チャットモンチーが人気を得た理由はこれも大きいと思う。
“女の子ならではの表現”と“シンプルな比喩表現”“ギター、ベース、ドラムを基調としたシンプルながら強い構成”がチャットモンチーの魅力であると思う。
脱退した高橋久美子の詞ではなく、ベース福岡晃子の詞と橋本絵莉子の作曲であるけれど、僕はLast Love Letterという曲がとても好きだ。
“もう会う事はないであろう人”に向けた歌である。
精一杯の声を張り上げ、力強いベースで攻めかけ、ドラムで曲の感情表現がなされる。
とにかくこの曲を聴いて、新鮮だったのは飽きさせないスピード感と“もう会う事はないであろう人”を気遣う強さだ。
バラードに仕上げずに、“この疾走感で語られる別れ”だからこそ届くものがあると思った。
わたしの届かぬあなたへ/愛のある日々を/栄光の結末を/どうかあなたに/あなたに(Last Love Letter/チャットモンチー)
決して自己中心的な感情だけでは終わらない悩みや葛藤を、歪んだギターでがむしゃらに掻き鳴らし、声を張りあげる。
それは、新体制になってもきっと変わらない。