おやすみプンプンとノルウェイの森と人間失格
タイトルに三つの作品名を雑にぶっこんでしまった(どれも名作なのに)。
まず三作品の軽い概要(感想)を。
- 作者: 浅野いにお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/08/03
- メディア: コミック
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浅野いにお独特の独白の多いタッチと、繊細で大胆なコマ割で物語は展開していく。
この漫画の特徴はなんといっても、鳩サブレが主人公の所だ(一部語弊あり)。
主人公の鳩サブレである通称プンプンの小学生時代からの生き様を描き続けている。
プンプンは、どちらかと言えば、どちらかと言わなくても、根暗で、誰もが抱いている苦悩とか葛藤なんかを深く深く自分で掘り下げてしまうタイプ。
人並な人生を送りつつも、常に低空飛行(ネガティブ)。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/15
- メディア: ペーパーバック
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細かな風景描写と性描写が多く、一部では官能小説と揶揄されたりもしている。
また、基本的にずっとローカルな視点で物語が進んで行くのであまり広がりがない(こんな恋愛ばっかしてる大学生いねーよ、と言われたりもする)。
主人公ワタナベは一人の女性(直子)に思いを寄せながら生きつつも、その中で何度も苦悩する。
ただ、感情の突起はあまりなく、あくまで俯瞰して物事を見続けている印象があった。
なんというか、ワタナベからはあまり覇気が感じられない。
けれど、そつなくなんでもこなしていってしまうイメージ。
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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“恥の多い生涯を送って来ました。”という書きだしの一文は有名。
独白に近い観点で言葉が紡がれていき、とにかく終始不穏なムードが漂っている。
前述した二作よりは、共感しやすい主人公であるけれど、その共感しやすい部分というのはあくまで「あるある感」であって抉られるような強さは滅多にない、かもしれない。
そんなわけで、この三作品が何故並んだのかと言えば、実は偶々で、気分で、特に理由はない。
とは言いつつも、いずれの作品も“根暗な主人公の独白によって大きな広がりのない人生を綴っていく”という共通点があるように感じた。
特にノルウェイの森も、人間失格も、おやすみプンプンも女性に翻弄されるのだ。
女性に翻弄される、というのはちょっと語弊があるかもしれない。
葛藤や苦悩や、絶望、希望に必ずついて回る女性の影がある。決して解離させることのできない。
先に断っておくと、この三作品を同じ机上に並べてしまったけど、それぞれのファンからしたら作品が言いたいことはそれぞれ違うと言いたいかもしれない。
特にノルウェイの森なんかは「生と死」がテーマになっているとも言われている。
でも、そういう点から見ていっても、どの作品も「自分とは何か?」みたいなものを物凄く突き詰めて言っているし、厭らしく言えば「生きるってなによ」という部分をものすごくミクロな視点で探究していると思う。
あと「喪失」というものも、共通しているテーマだと思う。
人間失格であれば「自身という存在の喪失」
ノルウェイの森であれば「過去の喪失」
おやすみプンプンであれば「喪失感の喪失」
喪失感の喪失というのは、きっとプンプンは「喪失感」があるまま生きているのだけれど、それがそもそもなにを失くしたものなのかが分かっていないのだと思う。
そういうものを考えるきっかけとさせるのが「女性」であって、悪く言えば物語の歯車的存在となっている。
女性が人生を錯覚させ、辟易し、絶望する。
その過程で、小さく小さく、葛藤を続ける。
少しネタバレを含む内容になるけれど、ノルウェイの森でレイコさんが施設で働くきっかけとなった「できすぎた少女」とおやすみプンプンでの陶芸教室で事件をおこすきっかけとなった「影のある女子高生」はものすごく設定が似ている気がした!
それとノルウェイの森に出てくる永沢と人間失格の堀木が似ている、というのをネットで見掛けた。これはポジション的な意味合いが強いかもしれない。
そんなわけで。
雑に言うと、どの作品も「主人公の置いてけぼり感」が強いのだ。孤独感をどの主人公も強く抱えているのだ。
勝手に世界は進んでいき、社会は回っていき、周りは無関心で蠢き続ける。
そういう中で生まれる「虚無感」や「喪失感」を僕らはどうしたらいいのだろう、というのをあえて言うなら僕が三作品を並べた理由。
ソラニンも2巻で完結し、虹ヶ原ホログラフ、世界の終わりと夜明け前、素晴らしい世界、等々の短編集しか出してこなかった浅野いにおはどの物語でも「葛藤に近いもの」は描いて来ていたけれど、ここまでストイックに突き詰めているのははじめてだと思う(本人にどのくらい意気込みみたいのがあるかは分からないけれど)
その点、ノルウェイの森はwikiをみると村上春樹氏の物凄くポジティブなモチベーションで書かれたように思える。
そういう書き手からの意味では、夫々違ったテンションで吐き出された作品かもしれない。
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