森本千絵“en°木の実”展@ワタリウム美術館内オン・サンデーズ
▼森本千絵に染まった世界そのものへの小旅行〜圧倒的なエネルギーとかがやき
個展と名はついてはいるものの、中に在るのは森本千絵さんの企画書であったり、制作物であったり、私物であったりして、まるで森本千絵さんの頭の中に招待されたような雰囲気だった。そして、順路もない。だらか、それぞれがそれぞれの思いの描き方、移ろい方で個展を見ることができた。
僕が森本千絵さん、という存在を知ったのはなんであったかはっきりとは覚えていない。ただ、きっとMr.Childrenであったのだろうな、とは思っている。それがHOMEであったかSUPERMARKET FANTASYであったかは定かではないが、「ポップなアートディレクションをするひと」というのが第一印象だった。
そこから何故か森本千絵という人物そのものにのめり込んでいき、作品集を買ったり、PENの森本千絵特集を購入したりした。
森本千絵さんの魅力的な所は、とことん前向きな部分にあると思う。いや、制作過程などを覗けばそこには多くの試行錯誤があったのは受け取れるのだが、その結果、産みだされた作品たちは、とことん前を向いているのだ。
エネルギッシュで、未来を切り開く、というよりは“森本千絵という存在そのものが未来”と言ってもいいと思う。彼女の作品たちに触れていると、そのポジティブなエネルギーに吸い込まれ、自分もそこに存在し、未来そのものを感じているかのような錯覚に陥る。
▼つながる つながる クリスマス「present→present」〜ひとを信頼する至福
例えば、僕が森本千絵さんの作品、アイディアで好きなものが「present→present」という企画だ。僕は雑誌で読んだだけなので、実際に足は運べませんでしたが。。。
とあるショッピングモールに設置されたいくつものコインロッカー。そこに“どこの誰かも知らない相手からのプレゼント”が収納されている。訪れた人は、自分が持ってきたプレゼントと引き換えに、“知らない誰かから”のプレゼントを受け取る。
つまり、“知らない誰か”から贈り物をもらい、“知らない誰か”へ贈り物を渡す、という企画だ。
はっきり言うと、これは人を信じていなければ成功しない企画だと思った。心の底から、好きなものやひと、そして、この世界を信じているからこそ、ポジティブなエネルギーを願っているからこそ、開催された企画だな、と個人的には感じた。
以下、リンク。
blog|goen°
人を信頼する。人でなくとも、ものを信頼する。生きるということを信頼する。その信頼にはいくつもの悲しみとか痛みがきっと蓄積されているけれど、その向こう側をしっかりと信頼している。そういう森本千絵さんの作品から感じる希望は、関わる人、触れる人、通り過ぎる人の心を元気づける。
▼Mr.Childrenと森本千絵
そんな森本千絵さんの作品たちに元気をもらいながら、Mr.Childrenの企画書を見た。
展示してあった中で手に取って企画書を読めたものは、「GIFT」「HANABI」「SUPERMARKET FANTASY」「SENSE」、そして手にとっては見れなかったが彼女にとっての独立のきっかけとなった作品という「HOME」も展示されていた。
「HOME」については彼女の作品集「〜」を読むとエピソードなども細かく書いてあり、「HOME」に込められた思い、というのがよくわかると思う。
ちょっとだけ裏話を明かすと(とはいえネットにも載っているか?)Mr.Childrenファンの方々は知っているかもしれないが、「HOME」のジャケット、歌詞カードに掲載されている家族はすべてほんものの家族で、シングルマザーであったり、子供がいなかったり、夫が何人もいたり、そういう家族構成そのもの、すべてが真実であり、みんな笑っている。森本千絵さんが、そんなことを思いついたのは、おばあちゃんとの教会での出来事からだそうだ。その詳しいエピソードが作品集に掲載されている。
企画書を読んで感じるのはとにかく何百回も、何千回も、何万回も、アートディレクターである森本千絵は思考を繰り返しているのだな、ということ。
「SENSE」に関しては、とにかく何十通りものジャケット候補が掲載されており、初めてアルバムを聴いた時に感じた「クジラ」のイメージから離れては戻り、離れては戻り、また「クジラ」へと帰着する。
そこで感じたものを、そのままの姿で作品にするときもあれば、みんなが普段思っていることを、可視化、具体化するように作品化されているものもあった。
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「花火」という言葉から連想する景色そのものが、僕の心を揺れ動かすのだから、どのジャケット案も採用してほしいなって思うぐらいに魅力的だった。
その中でも、「花火そのものではなく、花火を見ている人たちこそ輝いているのではないか、ということにスポットを当ててみました」という説明と共に提案されているジャケットがあって。
そこには、黄昏時、土手に座って半袖姿の人たちが、空を見上げていまかいまかと花火が打ち上がるのを待っている人たちの光景が写真として残されていた。その写真を見た途端に、ちょっとだけ煙たい臭いも、黄昏時の暑い空気も、ざわついて落ち着かない雰囲気も、午前中遊んだ記憶も、やり残した宿題の事も、すべて思い出した。
Mr.Childrenとは多少逸れてしまうが、“人の記憶をくすぐる”ことのできる作品ほど強く儚いものはないな、と。
この胸のざわめき具合を写真に、ジャケットに真空パックした森本千絵さんのディレクション能力、アートワークには、勝手に感動してしまった。
あれは、ぜひ、いつか、またもう一度見たい。
そして、なんらかの形でまた発表してほしい(笑)
▼あとがき
森本千絵さんは、大好きなアートディレクターのひとりなので、改めて森本千絵さんそのものの事について書きたいと思っている。
本記事は、個展についての雑記、みたいになってしまったので。。。
個展を行くと、作品そのものからエネルギーをもらったりすることが多いのだけれど、この個展は、周りの空気、交流、それまでの過程すべてにおいてエネルギッシュで、多くの人の祝福する気持ちが溢れていて、元気をもらえる個展でした。
いま、大宮エリーさんのUstream番組「スナックエリー」を見ているのだけれど、今期は大宮エリーさんの「生きているということ」展と森本千絵さんの「en°木の実」展、ふたりの素晴らしい女性アートディレクター(クリエーター?)で持ちきりだったなー。
改めて、女性目線、というものも考えた。
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