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Mr.Children「SENSE」を用いて「ティザー広告」を紐解く×ついでに、謎のフジテレビCM「霊に好かれる男」を考えた

▼フジテレビのCM「霊に好かれる男」が気になっている。
現在フジテレビでちょっと奇妙なCMが度々流れている。
「霊に好かれる男」といったタイトルのCMだ。
15秒CMで出演者は、三浦友和東加奈子、そして霊に扮するお笑い芸人カラテカの矢部の三人。
フジテレビ側ではこのCMを「15秒シアター」と位置付けているらしく、すなわち15秒の短編(連続)ドラマとも受け取れる。というか、そういう受け取り方でいいのかな?
個人的には、このCMは「ティザー広告*1」とかなのかな?と当初思って記事を書いた。

けれど、どうやら「広告」ではなく、本当に「15秒(連続)ドラマ」のようです。
何週かにわけてCM枠を使い15秒ドラマを展開していく、ということのようです。
せめて公式HPがあってもいいとは思うのですが、調べさせることがフジテレビの戦略なのかもしれません。

Mr.Childrenファンなので、Mr.Childrenの「SENSE」のプロモーションの例を使って基本的にはティザー広告そのものについて書いてみました。
フジテレビのCM「霊に好かれる男」についての見解は最後にちょろっとだけ書きました。
結果的に「ティザー広告」とは関係ないようなのですが。。。

▼かつてMr.Childrenも似た様な手法でプロモーションを行っていた
このCMを見て思い出したのが、Mr.Childrenが2010年12月に発売したアルバム「SENSE」でのプロモーション方法。

アルバムが発売するかどうか、そんなことすら全く聞かされていない時期、10月中旬頃くらいだろうか、深夜のテレビ番組のCMではじめに「今から流れる映像はMr.Childrenの広告です」と前置きされた後15秒間、画面上に味気ない3Dグラフィックが淡々と映し出され、最後に“feel it coming”の文字、そして「Mr.Children リリースにキ〝タイ」と表示されるだけのものでした。

その映像が以下。

CMが放送されてすぐネット上では話題になり、「新作のリリースだ!」と騒がれるものの、Mr.Childrenサイドはおろか各種メディアからも新作の情報は一向に出てきませんでした。
しかし正直な所、このCMを見た大半の人が「霊に好かれる男」同様に「意味が分からないよ!」と内心つぶやいたことと思います。
この後も、いくつかのCMが展開される。
が、結果的に、アルバムの情報(曲目等)は発売日の12.1の前日まで解禁されることはありませんでした。
「放置プレイ」とはまさにこのことで、Mr.Childrenファンは「なんとなく新作の予感がする・・・」というそれぞれがそれぞれに妄想を膨らませた勝手な期待を持て余しながら、いつか来る日をただ待つしかなかった。
アルバム流通(予約)の都合上12.1になにかがリリースされるというところまでは解禁せざるを得なかったが、世の中に義務的に出さなければいけない情報以外はすべてシャットダウンした、という言い方が正しいかと。

▼「ティザー広告」とは?広告における“AISAS”というモデル
前置きがとんでもなく長くなったが、広告業界ではこれを「ティザー広告」と呼びます。

ティザー広告とは、広義では、ある要素を顧客に明らかにしないことによって注意をひこうとする商業広告の一手法で、狭義では「本来、広告で伝えるべき商品についての要素のいくつかを意図して明らかにせず注目を集める広告手法」
(引用元:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E5%BA%83%E5%91%8A)」

つまり、本来宣伝とは宣伝内容を明らかにして顧客に訴えていくものであったが、そうではなく、商品についてのほんの一部だけをちらつかせ、注意を引く、というものだ。
ずいぶん前に巷で話題になった「ステマステルスマーケティング)」ともある意味では、近い部分があるかもしれない。
しかし、ステルスマーケティングと大きく違う部分は、それが“広告であると主張しているかどうか”であり、そういう意味では宣伝においての発想のスタート地点がまったく違う。それに、海外の規制の具合も違うしね。
・・・書いてて思ったけど、全く別物だわ。

ティザー広告は、Mr.Children、フジテレビ、どちらにも共通して言えることだけれど、「情報のすべてを開示しない」というある意味ではデメリットとも取れる部分があるからこそ、“ブランドとしての影響力”が大きければ多いほど効果があります。
これが、ブランドも何も知らないと、調べる気すら起きない可能性が出てくるが、既知のブランドであると、「あれ、結局なんだったんだろう?新作かな」「新しい番組かな」などと気になって、次のステップへと誘導させることができる。
ティザー広告を実践してきた有名な例として、「Wii」発売時のCMや、マクドナルドの「QUARTER POUNDER(クォーターパウンダー)」のCM、また国内での広告展開があったりもします。

必要な情報をどれだけ広告枠の中に詰め込むか、と広告マンが考えることはすなわち、顧客にとって、その商品の必要な情報をほぼすべて与えてしまうという事。
では逆に、ほんの一部しか与えなかったら、顧客は商品にアクセスしていくのか。
電通が“AIDMA”という概念から“AISAS”という概念へシフトチェンジしていくというのはまさにその通りで、僕らは外部から発信される情報に“Attention(注意)”し、そこからまた一部の情報に“Interest(興味/関心)”し、その一部をネット等を通して“Search(検索)”し、“Action(行動)”し、そこで得た情報を“Share(共有)”する。

▼「ティザーサイト」など様々な展を仕掛けたMr.Childen「SENSE」のプロモーション
Mr.Childrenの例に戻すと、Mr.Childrenは、そのCMをいくつか展開させ、ネット上に“SENSE Project”という名の「ティザーサイト」を設立した。
「ティザーサイト」とは上記の「ティザー広告」の展開の場がウェブに移ったものであり、サイトそのものにアクセスしても、商品そのものの大きな情報が得られるものではないが、いくつかの情報の一部が鏤められている、といった手法。
ネット上にいくつかの仕掛けがあり、その仕組みを解いていくと“トビウオニギタイ”というキーワードに辿りつく。
Ustreamのようにリアルタイムの動画配信映像に携帯電話が映し出され、キーワードの番号に電話するとその電話に着信が起き、“トビウオニギタイ”と言ったキーワードが映し出されたり、twitter上で“トビウオニギタイ”と呟く仕掛けが在ったり、まあ、こんなもの楽しんでいたのはミスチルのファンだけだろうが、とにかく「トビウオニギタイってなんだ!」ということになりました。

結果、この“トビウオニギタイ”も12.1に発売された「SENSE」というアルバムの「擬態」という楽曲のワンフレーズでした。
まさに「宣伝したい商品の一部のみを小出しにする」といった通りですね。



※例えばこれは、プログラミングコードのような文字列を反転させると文字が浮かびあがる仕組み。

最終的に“SENSE Project”によって開設されたティザーサイトは、アルバム発売の前日あたりに画面一面にクジラの画像が「SENSE」というタイトルと共に映し出された。
実質、それがアルバムのタイトルであり、宣伝となった。
とても衝撃的であったのを覚えています。

そのティザーサイトもまだ残っている(これはもしかしてミラーか?ドメインが当時と違う気も・・・)。
以下のサイトを参考にどうぞ。
SENSE PROJECT WEB

この、普通の宣伝方法より、一見はるかに宣伝効果の低そうに見えるMr.Childrenティザー広告は、これだけでは終わらなかった。

▼ファンにとっての名アルバム「深海」を予感させる真夜中の報告
アルバム「SENSE」が発売する前日、11.30(もう少し早かったかも?)に都内に“(暗い)海”を撮った写真がいくつか広告として掲載されました。
この広大な海の写真の隅っこの方に“Mr.Children”と記されているのみで、これもネット上に目撃談が多くあり盛り上がりました。
盛り上がる理由は、アルバムのリリースへの期待だけではありません。
Mr.Childrenファンなら誰もが盛り上がるはずなのだ。これは名盤として知られるアルバム「深海」の再来じゃないか?と。もしくは、それがモチーフになっているのではないか?と。個人的にアルバム「SENSE」はアルバム「深海」に劣らないほどの震え上がる名盤でした。
その海の写真に思いを馳せていると、アルバム発売当日、その海の写真から、たちまちクジラが飛び出し、アルバム「SENSE」の広告塔へと変貌したのです。
ただ、写真が差し替わるだけではなく、その海の写真の下にクジラが潜んでいた事、「SENSE」というアルバムが奥深くにずっと虎視眈々といまかいまかと世に出る時を待ち望みながら、解禁日にしぶきをあげて飛び出してきた比喩にもなる感動が、そこにはあった。
ぶっちゃけ、これすべて3日以内ぐらいの出来事なので、ミスチルファン以外はどちらの広告も見ている、ということは少ないと思うのだけれどね。

でも、これだけの広告費を出してまでMr.Childrenが広告塔となり「ティザー広告」を試したのはすごいことだと思う。

ちなみに、、、調べていると出てきて思い出したものがあって、“トビウオニギタイ”で品川駅をジャックしたこともあった。
以下のtogetterでその写真が掲載されているツイートが載っています。
トビウオニギタイ - Togetter

当時の海だけの写真が残ってないんだよな。。。

▼「霊に好かれる男」は「ティザー広告」か?
さて、フジテレビの話に戻ると、「霊に好かれる男」も、この「ティザー広告」のひとつではないか、ということ。※結果違いました
それがフジテレビそのもののプロモーションであるのか、ドラマやバラエティ番組、はたまたニュース番組への布石であるのかどうかは分からない(「ホラーアクシデンタル」の広告なのか?)。※ただのドラマでした
「ホラーアクシデンタル」というドラマへの広告なのか、それともCMはCMで「15秒(連続)ドラマ」という新しいジャンルをこれから確立していく為の実験なのか。※「15秒連続ドラマ」という新しいジャンルの確立のためのようです

例えば「あの女優の出ている15秒ドラマが観たい!」となったら、予想される番組にずっと張り付いて居なくちゃいけない、そもそもチャンネルをフジテレビに合わせるしかない(笑)わけだからね。※そういうのが狙いのようですね
まあ、いまの時代にテレビに張り付く!ということもまずないと思うけれど、CMそのものに価値を置いて、CMをスキップさせないための手法なんかも、数年前までは議論されていたから。※3話から見てしまう人がいないように広告枠は削って放送しなくてはいけないし、難しいかもしれません。ただ、四コマ漫画のようなコミカルさはあるかもしれません

ただ、「ティザー広告」であるとすれば、相当力の入った企画が後に控えているんじゃないかな、と期待している。自社のCMであるとはいえ、相当数の広告枠を削って放送しているので。
どうにせよ、こうやって「霊に好かれる男」ってなんだ?と気になってはググって推測すること自体が広告としての効果の一環であるから。
現にtwitterなどでは「気になってしまう」「なぜか印象に残ってしまう」「話題性を狙っているのか?」などとの声が上がっている。

次の展開が気になるCM(広告)です。
ほんとうに15秒(連続)ドラマという新しいジャンルの確立だったら、それはそれで面白いけど(笑)※確立したようです